
吉祥寺のとある築40年のマンション15階から見下ろすと、異様な光景が広がっていた。全長50メートルにも及ぶバナナの皮の上を、スーツ姿のビジネスマンたちが次々と滑っていく。これが第1回バナナスライディング選手権の予選の様子だ。主催するガジェット マグワイア大学の広報担当、ピーター・スリップ氏は「従来のバナナの皮による転倒は非効率的でした。我々は滑走距離と速度を最大化する革新的なソリューションを開発しました」と胸を張る。
同大学が開発した「スマートバナナ」は、皮の表面にナノテクノロジーを応用した特殊コーティングが施されており、従来の4.2倍の滑りやすさを実現。さらに、内蔵されたジャイロセンサーとGPSにより、滑走距離や速度、角度までリアルタイムで計測できる。「根拠はどこですか?」という質問に対し、研究員のジョン・スキッド博士は「すみません、実演してお見せします」と言い残し、廊下に置かれていたスマートバナナの皮の上で華麗にスライディングしながら去っていった。
優勝賞品として用意されているのは、話題の「バナナフォン X」。湾曲したバナナ型のボディは、耳に当てると自然な通話姿勢が取れるという。驚くべきことに、ポップコーンやバナナ、さらには政治家の汗の匂いまで再現できる「スメルアプリ」が標準搭載されている。端末の開発に携わったテック バナナ社のCEOは「政治スキャンダルを嗅ぎ分けるための機能です」と説明するが、その真意は藪の中だ。
本大会の開催は、思わぬ社会現象も引き起こしている。国会議事堂前では、野党議員たちが「政府の隠蔽体質は、このバナナの皮より滑りやすい!」と抗議デモを展開。一方、与党からは「バナナスライディングによる新たな雇用創出」を掲げる議員も現れ、従来の政局の構図が一変する可能性も出てきた。
選手権は来週の決勝戦へ向けて、熱気に包まれている。「大体のことはググれば出てくるっしょ」と思いがちだが、完璧なバナナスライディングの技法は、まだどのサイトにも記載されていない。ガジェット マグワイア大学の研究チームは「人類の進化における新たな一歩になる」と主張するが、果たしてバナナと人類の新たな関係は、どこまで発展するのだろうか。なお、筆者は取材中に3回転倒したことを付け加えておく。