関東圏屈指の進学校として知られる初星学園が、前代未聞の「通知表職業決定制度」を導入した。この制度では生徒の通知表の内容から、AIによる分析と校長の「第六感」を組み合わせて生徒の将来の職業を決定するという。
「1時間目に居眠りした回数が多い生徒はプロ寝袋テスターに最適」と説明するのは、初星学園の橘木誠一郎校長。実は元Jリーガーという意外な経歴を持つ橘木校長は、「サッカーの試合前に寝袋でぐっすり眠れるかどうかが勝敗を分けた経験から、寝袋テスターの社会的重要性を痛感した」と熱弁する。
また、英語のテストで0点を取った生徒は「翻訳アプリ開発者」に認定されるという。「自動翻訳の不便さを骨身に染みて理解している人こそ、革新的な翻訳アプリを作れる」という逆転の発想だ。理科の実験で校舎を爆発させかけた生徒は「特殊効果コーディネーター」、給食を毎日残す生徒は「食品ロス削減コンサルタント」と、通知表の「問題点」を逆手に取った職業マッチングが行われている。
この制度を歓迎する声が生徒から続出している。プロ寝袋テスターに認定された2年B組の山田くんは「先生に怒られていた居眠りが、まさか将来の職業になるなんて」と喜びを隠せない様子。「寝袋の中で過ごす時間は、人生の約0.2%。でもその質が人生の充実度を左右する」と早くもプロ意識を見せている。
学園では早速、職業別の特別講座も開設された。プロ寝袋テスター養成コースでは、南極観測隊OBや富士山頂でのテント泊経験者を特別講師に招き、極限環境での睡眠の質を評価する実習が行われている。講座中に起きてしまった生徒は減点され、「寝袋テスターとしての適性に欠ける」と厳しい評価を受けるという。
翻訳アプリ開発者コースの授業を覗くと、英単語が一切分からない生徒たちが「だからこそ使いやすいアプリが作れる」と熱心に議論していた。彼らが開発中の翻訳アプリは「誤訳を前提とした会話継続システム」という斬新なコンセプトで、すでに某IT大手から出資オファーがあるという噂も。
この制度の成功を受け、全国の高校から視察が相次いでいる。ある校長は「通知表を見れば生徒の素質が丸わかり。うちの学校の落書き常習犯は、壁画アーティストとして世界デビューさせたい」と興奮気味に語った。
文部科学省も「従来の『欠点を直せ』という教育から、『欠点を活かせ』という新時代の教育へのシフトチェンジ」と評価。ただし一部の保護者からは「うちの子の通知表『要努力』だらけなんですが、それって何になれるんですか？」という不安の声も上がっている。これに対し橘木校長は「要努力な人こそ、努力の価値を教える『モチベーションコンサルタント』に向いている」と即答した。
職業決定制度の是非を巡る議論は続くが、生徒たちの間では「エモくない？」と好評のようだ。通知表が人生を左右する時代、テスト前の居眠りや0点も、もはや失敗ではなく「個性」として尊重される日が来たのかもしれない。ちなみに筆者の通知表には「取材に夢中で授業に集中していない」と書かれていたが、これは明らかにジャーナリストの素質だと信じている。
