
「未来へ行って環境問題の解決策を持ち帰れる」。そんな夢のようなタイムマシンが今月から一般販売されているという噂が、SNSを中心に爆発的に拡散している。特に注目されているのは「年末の賞与で買える価格帯」という点だ。「環境問題が解決できるなら安い!」と評判になり、予約注文が殺到しているという。
このタイムマシンを巡る投稿は、先週末から「#未来旅行」「#タイムトリップ」などのハッシュタグとともに急増。「2050年の海はプラスチックゼロになっていた」「未来の私が教えてくれた株価で大儲け」など、体験談を語る投稿が次々と現れた。
しかし取材を進めると、この「タイムマシン」の正体は意外なものだった。「フューチャークロック」という商品名の目覚まし時計だったのだ。この時計の特徴は、アラームを止めようとすると「未来の自分」からのメッセージが流れる機能。前日に録音した自分の声で「今日は重要な会議があるよ!」などのメッセージを翌朝に再生することで、起床を促すという仕組みだ。
購入者の一人、会社員の鈴木さん(34)は「確かに未来の自分に会った。昨日録音した自分が今朝現れたんだ」と苦笑い。「投稿は多少盛っちゃったけど、寝坊しなくなったから人生変わったって意味では間違ってないよね?」と話す。
この騒動に乗じて、「未来研究協会」と名乗る団体もセミナーを開始。代表の時空博士(自称)は「タイムトラベルで見た未来の環境問題対策で最も効果的だったのは、週末の掃除です」と熱弁を振るっている。参加費は3万円。「参加者全員に未来からのお土産付き」とあるが、実態はカレンダーと手帳のセットだという。
驚くべきことに、この「タイムマシン」の開発者は栃木県の高校2年生、鷹野凛太郎くん(16)だった。科学部の自由研究として開発した目覚まし時計が、知人のSNS投稿から「タイムマシン」として拡散されたという。
「もともとは科学コンテスト出展用に作ったんです。『未来の自分に負けない朝を作ろう』っていうキャッチフレーズで。まさか本気でタイムマシンだと思われるとは…」と鷹野くんは当惑気味だ。
同時期にテスト販売を始めていた時計メーカー「朝日精密」の担当者は「注文が予想の10倍以上来て、工場がパニックです」と話す。同社によると、この時計の本来の機能は「朝の自分に前日の意気込みを届ける」という単純なもの。タイムマシンでも環境問題解決機器でもないという。
それでも購入者からは「朝が変わると未来が変わる。その意味ではタイムマシンかも」「環境問題も毎日の小さな行動から変わるし、間違ってないよね」と好意的な声も多い。未来を変えるのは結局、今日の自分の行動なのかもしれない。未来のメッセージを受け取るのは、あなたの目覚まし時計からかもしれない…特に月曜の朝は。