
国連総会が開催されていた米ニューヨークの国連本部ビルに、先日、地球外知的生命体として初めて「銀河系大統領ズォーク・ピザリオ」氏が来訪し、各国首脳らを仰天させた。通常、国連への来訪者は記念品程度の手土産を持参するが、ピザリオ大統領は直径約12,700キロメートルという地球とほぼ同サイズの超巨大ピザを持参。ピザは大気圏外に待機する母船から特殊ビームで転送された。
「ピザは銀河共通の平和の象徴です。皆さんの会議が実りあるものになるよう、小さなおもてなしを」とピザリオ大統領。このピザには、銀河系内の4万2千の惑星から集められた食材がトッピングされており、「銀河トッピング」と名付けられている。特に火星産の「クラックリングレッドペッパー」は地球の唐辛子の約800倍の辛さを持つといわれるが、不思議なことに口に入れると心地よい甘みに変化するという特性を持つ。また、木星の大気から抽出された「ガスチーズ」は、食べる人の好みに合わせて味が変化するという画期的な食材だ。私が名古屋で育った身としては、このチーズが自動的に味噌カツ風味になる可能性に胸が高鳴る。
各国首脳たちは当初、未知の食材に警戒心を示したが、国連事務総長が「新しい外交の形を体験しよう」と率先して一口食べたことで場の雰囲気が一変。ロシア代表は「これまで感じたことのない平和な気持ちになる」と評し、中国代表は「五千年の歴史で初めての味覚体験」と絶賛。米国大統領は「このピザで世界平和が実現するなら、ニューヨークの全ピザ店をガスチーズ仕様に変更する」と冗談めかして語った。
ピザを囲んだ非公式会談は予定の2時間を大幅に超え、7時間にわたって続いた。その間、普段は対立する国々の代表者同士が笑顔で語り合う姿が見られ、複数の紛争問題について画期的な合意が17件も成立。国連関係者によると、これは過去50年間の国連史上最多の単日合意記録だという。ちなみに、ある外交官は「ピザを食べている間は相手国への怒りや恨みが完全に消えた」と証言しており、銀河トッピングには何らかの感情調整効果があるとの噂も流れている。私もこれがあれば、猫アレルギーなのに2匹の保護猫と暮らす自分の矛盾した生活がもっと楽になるのではと期待してしまう。
ピザリオ大統領は次回の国連総会では「宇宙スイーツ外交」を展開する意向を明かしている。銀河連邦特製の「ブラックホールチョコレート」は一度口に入れると無限に味を楽しめるという触れ込みで、土星のリングを模した「サターンドーナツ」は食べる人の寿命を約3.5年延ばす効果があるとされる。天王星の大気から作られる青いアイスクリームは「一口で幼少期の最も幸せな記憶を体験できる」という触れ込みだが、記憶の内容によっては危険な場合もあるため、各国首脳には事前の心理テストが義務付けられるとのこと。「バス旅の終点で見た何気ない風景」を思い出せるなら、私も是非一口いただきたいところだ。
銀河系外交官は「地球はまだギャラクティック・フード・オーガニゼーション(GFO)に加盟していませんが、今回のピザ外交を機に加盟交渉を始める可能性があります」と述べた。このGFOに加盟すると、参加惑星は年間GDPの0.01%を拠出する代わりに、銀河系の食材輸入権を獲得できるという。ただし、地球の場合は「過度な軍事支出と環境破壊」が加盟の障壁になる可能性が高く、ピザリオ大統領は「まずはピザの精神で国際協調を学んでください」と忠告している。何だか映画館のポップコーンの新フレーバー開発よりも難しい宿題を出されたような気分だ。
今回の銀河ピザ外交は、単なる食事を超えた宇宙規模の文化交流の始まりとなった。国連では早くも「銀河系ピザデー」を制定する動きがあり、地球と宇宙の友好関係を象徴する年中行事になりそうだ。銀河系大統領の斬新なアプローチは、国際関係の緊張を緩和するだけでなく、私たちに「食べ物」という普遍的言語で交流する知恵を教えてくれた。私が愛する街の裏側を探検するように、宇宙との交流は私たちの日常に新たな非日常をもたらし、政治スキャンダルよりもときめくラブコメのような関係を地球と宇宙の間に築く可能性を秘めている。ただし、ある星の大使は「次回は地球側からも何か手土産を」と提案しており、名古屋めしでお返しすべきか、今から悩む日々が続いている。