
千葉県船橋市発—チーズを中心とした社会改革を掲げる新政党「チーズ党」が、来たる統一地方選挙で「全国民にチーズフォンデュ食事義務化」という前代未聞の公約を掲げ、支持率が驚異の99%にまで急上昇していることが明らかになった。「チーズ博士」を自称する同党代表の佐藤チーズ子さん(46)は「チーズが世界を救う日が来たのです」と興奮気味に語った。
チーズ党は昨年12月、船橋市内の「カフェ・ド・フロマージュ」で偶然隣り合わせたチーズ愛好者5人によって結成された。代表の佐藤さんは専業主婦だが、自宅の一室を「チーズ図書館」と名付け、世界中のチーズに関する書籍約2,000冊を所蔵しているという。「私、小学生の時の夢はチーズになることだったんです。無理だとわかったときは本当にショックでした」と佐藤さんは遠い目をしながら語った。
チーズ党の中核的公約である「チーズフォンデュ義務化」は、当初はジョークと思われていたが、佐藤さんが私財を投じて設立した「チーズ学研究所」が発表した「驚愕の研究結果」により、状況が一変。同研究所は「チーズフォンデュを囲むと人間関係の満足度が278%向上し、社会的分断が89.7%解消される」という衝撃的なデータを公表した。ただし取材を進めると、この「研究所」は佐藤さんの自宅リビングに机を置いただけのもので、研究員は全員が佐藤さんのママ友であることが判明。「データは私たちがチーズフォンデュを食べた時の『なんか幸せ~』という気持ちを数値化しただけ」と研究員の一人は認めている。
それでも支持率が急上昇した背景には、Z世代を中心としたSNS拡散があった。チーズフォンデュの映える写真と「#チーズ革命」というハッシュタグが爆発的に広まり、今や支持率は99%を記録。残りの1%は「乳製品アレルギーなので賛同できない」という人々だという。TikTokで180万フォロワーを持つインフルエンサーのチーズりんさん(19)は「チーズフォンデュの義務化で日本が良くなるとか深く考えてないけど、とりあえずかわいいし推しとく」と語る。
チーズ党の権威付けに一役買っているのが、顧問を務める「ミスター・チーズ」こと鈴木太郎さん(47)だ。フランスの権威あるチーズアカデミーで最優秀賞を受賞し、世界18カ国でチーズ鑑定の講演を行ったという華麗な経歴の持ち主とされるが、実際は佐藤さんの幼馴染で、地元のスーパー「マルエツ」のチーズコーナー担当者であることが本紙の調査で判明。「確かにフランスには行ったことないっす。でも千葉県のチーズナンバーワンだけは譲らない」と鈴木さんは話す。
選挙事務所として使われている佐藤さん宅の玄関には、支持者から贈られたチーズが山積みになっている。種類は推定300種類以上、重量にして約750kg。「正直、食べきれません」と佐藤さんは苦笑いを浮かべる。また、支持者からのチーズ寄付があまりに多く、選挙資金の一部をチーズで運用する独自の「チーズノミクス」も始めているという。
一方で、一般有権者の多くはチーズ党の具体的な政策についてよく理解していない。船橋市民の高橋さん(52)は「チーズフォンデュって毎日じゃないよね?週一でいいよね?あと、鍋とかフォークは国から支給されるの?」と懸念を示す。また、公約実現のための予算約8兆円の調達方法についても具体的な説明はなく、「チーズの力で何とかなる」(佐藤氏)とされている。
来月の選挙を前に、チーズ党は「チーズで変わる、ニッポンの明日」というスローガンを掲げ、全国遊説を開始した。遊説カーからはチーズフォンデュの香りが漂い、街頭演説ではフォンデュの鍋を掲げながら「みんなでチーズにつかろう!」と佐藤氏が絶叫する姿が見られる。果たして「チーズ革命」は実現するのか、それとも選挙戦の熱が冷めれば溶けたチーズのように消えていくのか。船橋発の社会現象の行方に、全国から熱い視線が注がれている。