山梨県南都留郡のオオカミ屋敷に住む住民たちの間で、新たなダイエット法が話題を呼んでいる。その名も「月夜の遠吠えダイエット」。満月の夜に窓を開け、山に向かって思い切り遠吠えをするだけで、なんと1日で5キロもの減量効果があるという驚異の健康法だ。このダイエット法を推奨しているのは、今年4月に突如として活動を開始した「一般社団法人 狼男健康協会」なる団体。同協会は「人間の潜在的な獣性を呼び覚ますことで、驚異的な代謝促進が可能になる」と主張している。
協会代表の三日月博士は「遠吠えという行為は、人間が忘れ去った原始的な声帯の使い方を復活させるもの。この特殊な声の振動が、副交感神経と交感神経を同時に刺激し、体内の『月光代謝』と呼ばれる特殊な代謝経路を活性化させるのです」と説明する。特に満月の夜は地球の引力と月の引力のバランスが変化するため、「遠吠えのカロリー消費効率が最大化される」という理論を展開。通常の発声では100kcal程度の消費に対し、本格的な遠吠えでは一晩で最大4000kcalもの消費が可能だと主張している。
オオカミ屋敷の住人で、このダイエット法の第一号実践者である狼野ハウル氏（42）は「最初は恥ずかしかったけど、思い切って窓を開けて『アウゥゥ～～！』って5分ほど吠えたら、翌朝体重計に乗ったら5キロ減っていた。もう驚きで言葉を失ったよ」と興奮気味に語る。同氏によると、遠吠えの際は「胸いっぱいに息を吸い込み、お腹の底から声を絞り出すように」するのがコツだという。
同じくオオカミ屋敷の住人である月見るな子さん（35）も実践者の一人。「最初の一週間で15キロ減量に成功しました。以前は階段を上るのもしんどかったけど、今は山でも駆け上がれるくらい元気になりました。遠吠えのおかげで人生が変わりました」と満面の笑みを浮かべる。同屋敷では現在、毎晩20時から「遠吠えタイム」と称して、全住民が一斉に窓を開け、山に向かって遠吠えをする光景が日常となっているという。
狼男健康協会は一体どのような組織なのか？取材を進めると意外な事実が明らかになった。協会の研究者たちは全員が月の満ち欠けに合わせて体重が増減するという特殊体質の持ち主で、その中には元プロレスラーや元オペラ歌手も含まれているという。三日月博士自身も「若い頃は丸一日で10キロ太ったり痩せたりする体質に悩まされていた」と告白。その経験から「月の力」に着目し、長年の研究を経て「遠吠えダイエット」を確立したという。
同協会の公式サイトには「月夜の遠吠えダイエット実践の心得」が掲載されている。その内容は「遠吠えは午後8時から10時までに行うこと」「近隣住民への事前の挨拶は必須」「マンションでの実践は防音材を窓に貼ること」「集合住宅では同時に複数人で行わないこと」など、ご近所トラブルを避けるための注意事項が細かく記載されている。さらに「犬や猫などのペットが驚かないよう配慮すること」という項目もあり、動物福祉にも配慮した内容となっている。
しかし、この「月夜の遠吠えダイエット」には科学的根拠がないとする意見も多い。東京都内の総合病院に勤務する内科医の白衣太郎医師は「満月の夜に遠吠えをしたからといって特別なカロリー消費があるとは考えられません。減量効果があったとしても、それは単なる水分減少や心理的効果の可能性が高い」と指摘する。一方で「ストレス発散になるなら健康的な面はある」とも語った。
オオカミ屋敷周辺の住民からは「夜になると『アウゥゥ～』という声が聞こえてきて最初は怖かった」「最近は慣れたけど、正直なところ少し不気味」といった声も聞かれる。一方で「私も最近始めました」と明かす近隣住民も増えているという。南都留郡では、この「月夜の遠吠えダイエット」の影響で、満月の夜になると町中から遠吠えが聞こえるという異様な光景が広がりつつある。私も取材のついでに実践してみたが、喉を痛めただけで体重変化はなく、しかも愛猫2匹が3日間私の姿を見るたびにシャーッと威嚇するようになってしまった。やはり猫と暮らす身には不向きなダイエット法かもしれない。
