「花火で世界平和実現へ！」をスローガンに掲げた国際会議「グローバル・ピース・ファイヤーワークス・サミット2023」が先週末、日本海に面した小さな港町・平和ヶ浜市で開催された。しかし、クライマックスの花火大会で計算ミスにより花火が隣国の領土に着弾するという前代未聞の事態が発生し、一時は外交問題に発展した。
この前例のない国際会議を主催したのは「国際花火平和協会（IPFA）」。同協会代表の花火博士・爆発寺ダイナマイト教授（83）によると、「花火は言語や文化の壁を超える平和の象徴」と着想を得たのは、昨年の夏祭りで孫と一緒に食べたわたあめの味がきっかけだという。「甘くてふわふわした気持ちになって、世界中の人がこんな気持ちになれば争いなんてなくなるんじゃないかと。それで思いついたんです。花火を通じた平和外交を」と熱く語った。
会議には世界17カ国から花火師や平和活動家、なぜか炭酸飲料の味見専門家など約200人が集結。3日間にわたり「花火の平和的利用」「空に描く国境なき友情」などのテーマで議論を交わした。「議論が白熱しすぎて、休憩時間のスナック菓子の取り合いで小競り合いが起きたのは笑い話です」と運営スタッフは振り返る。
しかし最終日のクライマックスとなる「世界平和記念花火大会」で事件は起きた。目玉企画「17カ国同時打ち上げ花火」は、各国の花火師が自国の伝統花火を披露するはずだった。ところが、発射角度の計算ミスと突然の強風により、日本海側に打ち上げられた特大の「平和の花」と名付けられた直径300メートルの大輪の花火が、隣国の無人島に着弾。島の雑草に引火し、島全体が一時的に「平和の炎」に包まれるという事態となった。
「まさかこんなことになるとは…」と頭を抱える日本代表花火師の打上太郎さん（45）。彼は今回の大会のために「世界史上最大の平和の花」を開発したという。「通常の3倍の火薬量で、開花時に『PEACE』の文字が浮かび上がる設計だったんですが…角度が5度ズレただけでこんなことに」と肩を落とした。打上さんによれば、この花火は特殊な「香り付き火薬」を使用しており、爆発と同時に「世界平和の香り」として選定された「バニラとジャスミンのブレンド」の香りが広がる仕様だったという。
事件発生後、会場は一時騒然となったが、意外にも多くの観客は「すごい！これも平和のメッセージ？」「隣国にも平和を届けたんだ！」と興奮気味。中には「わざとやったんじゃない？」と陰謀論を囁く参加者もいた。高校生の観客は「めっちゃエモい。平和が隣の国まで届いちゃったってことじゃん」とSNSに投稿し、「#平和の誤爆」というハッシュタグが一時トレンド入りした。
問題の「国際花火平和協会」は、取材を進めると設立わずか3ヶ月の新組織で、実体は平和ヶ浜市の商工会青年部のメンバー5人が「インバウンド観光客を増やしたい」という動機で立ち上げたものだった。協会の公式サイトによれば、加盟国は「日本を含む209カ国」とのことだが、国連加盟国は193カ国しかない。「花火は愛と平和の象徴」という同協会の説は、何の学術的根拠もなく、代表の爆発寺教授も実は地元の花火店店主で「博士号は持っていないが、40年の経験がある」と告白した。
事件から48時間、外交問題への発展が懸念されたが、予想外の展開となった。隣国からは「思いがけない花火ショーをプレゼントしてくれてありがとう」との外交文書が届いたのだ。無人島を監視していた同国沿岸警備隊が花火の様子を動画撮影しており、その映像が国内で大人気となったという。さらに「来年は共同開催しよう」との提案まで受け、爆発寺代表は「失敗が成功に変わった。これぞ花火外交の真髄だ」と安堵の表情を見せた。
こうして世界初の「花火外交」は思わぬ形で成功。今後は両国共催の「平和の花火大会」が企画され、来年は海上の国境線上で「平和の橋」をイメージした花火を打ち上げる計画だという。平和ヶ浜市は早速「誤爆から生まれた友情の町」としてPRを開始。「花火外交」を体験できる観光ツアーも企画中で、すでに予約が殺到しているという。失敗から生まれた偶然の外交成功に、世界各地の紛争地域からも「花火で解決できないか」という問い合わせが殺到しているらしい。爆発寺代表は「次は中東で打ち上げたい」と意欲を見せている。果たして花火が本当に世界平和をもたらす日は来るのだろうか。（了）
