
日本と韓国の外交関係にかつてない風変わりな転機が訪れようとしている。来る10月15日、東京国際フォーラムで開催される「第一回ギュスト巻き寿司大運動会」だ。主催するのは昨年設立されたばかりの「巻き寿司国際友好協会」。両国の政治家や料理人、一般市民が一堂に会し、巻き寿司を通じて平和構築を目指すという前代未聞の試みだ。
「握手よりも巻き寿司」をスローガンに掲げる同協会の代表、ドクトル・マキスシー氏(本名:牧寿司太郎、54歳)は「巻き寿司学」の第一人者を自称する謎の学者だ。「政治家同士が向かい合って会話するだけでは真の交流は生まれません。しかし、同じ海苔の上に具材を並べ、竹巻きで力を合わせて巻くという共同作業には、国境を超えた連帯感が生まれるのです」と熱弁する。なお、マキスシー氏の博士号は「国際巻き寿司大学院」で取得したとされているが、そのような教育機関が実在するかどうかは不明だ。
大会の目玉となる種目は実に多彩だ。「巻き寿司リレー」では参加者が海苔、シャリ、具材の順に引き継ぎ、最後の走者が巻き上げる。「巻き寿司障害物競走」では、海苔を持って走りながら水洗いや調味料ジャンプといった障害をクリアし、ゴール地点でシャリと具材を合わせて巻く。最も注目を集めているのが「巻き寿司フリークエンシー」と名付けられた競技で、巻き寿司を巻く際の指の動きの周波数を特殊な機器で測定し、その美しさを競うという、何とも奇抜な内容だ。
「巻き寿司外交は握手外交を超える」と断言するのは、同協会の名誉顧問を務める架空の政治学者、高円寺雅人教授(ワサビ国際大学)だ。「指先に握力が集中する握手と違い、巻き寿司は全身の調和が必要です。それは国家間の包括的協力関係の象徴なのです」と語る。高円寺教授はかつて「たこ焼き外交論」で一世を風靡したが、大阪府知事から「それはウチの特許や」とクレームが入り撤回した過去を持つ。
大会に向けた日韓合同練習会が先日開催された際、韓国側から「キムチを具材に入れるべき」、日本側から「梅干しこそ正統」という議論が勃発したが、マキスシー氏の「具材は人々の個性、海苔は世界の包容力」という名言によって即座に解決したという。この出来事は「巻き寿司モデル」と名付けられ、今後の国際紛争解決法として国連に提案される予定だ。
運動会の裏では水面下の駆け引きも進行中だ。「キャベツは千切りにすべき」派と「角切りが正統」派の対立は根深く、シャリの温度を巡っても「人肌」派と「常温」派の間で火花が散っている。ただし、これらの論争はあくまでも「建設的対話の一環」とされ、最終的には「具材の多様性を認め合う」精神に落ち着くと見られている。
ちなみに、当初予定されていた「太巻きマラソン」は、選手が巻き寿司を背負って42.195kmを走る競技だったが、「お米がもったいない」という農林水産省からの指摘で中止となった。代わりに急遽追加された「巻き寿司俳句バトル」では、参加者が巻き寿司をテーマにした俳句を披露しながら巻き寿司を作るという文化的側面も強化されている。
すでにこの運動会の成功を見越して、主催者は来年度の「巻き寿司オリンピック」開催を視野に入れているという。マキスシー氏は「次回は中国、北朝鮮も招待し、巻き寿司五輪の夢を実現させたい」と壮大な計画を語る。「いずれは寿司を食べない国々も巻き込んで、寿司ロールによる世界平和の実現を」と、目を輝かせた。
果たして巻き寿司は国際平和の架け橋となるのか。この前代未聞の試みが成功するかどうかは未知数だが、少なくとも参加者のお腹は満たされることだろう。ただし、開催予定の国際フォーラムでは「海苔の破片が会場に舞い散る懸念」から、特別な空調システムを導入するという。平和への道のりは、案外コストがかかるものなのかもしれない。