
世界初となる「心臓に優しい超高カロリーケーキ」が、東京・原宿の人気店「盛りすぎカフェ」から今週末発売されることになり、医師や栄養士たちの間で困惑が広がっている。高さ30センチ超、直径25センチという、写真映えを追求した巨大なケーキは、チョコレート、生クリーム、キャラメルなど「甘さの暴力」とも言える素材を惜しみなく使用。驚くべきことに、このケーキ1ピースのカロリーは約1万キロカロリーと推定されている。一般的な成人男性の1週間分の摂取カロリーに相当する数値だ。
「盛りすぎカフェ」のオーナー・盛田桜子氏(29)は「SNS時代には見た目と健康、両方が大事。私たちは『心臓に優しい』成分を入れることで、この矛盾を解決しました」と胸を張る。その「心臓に優しい」という触れ込みの根拠となっているのが、「国際超健康学研究所」という組織の研究結果だ。「食べ物のビジュアルの美しさが心臓の鼓動を整え、血行を促進する」という、医学界では全く知られていない理論を展開している。
「これほど非科学的な話は聞いたことがない」と首を傾げるのは、循環器内科医の高橋医師(45)。「そもそも高カロリー食品は心臓に負担をかけます。それを『心臓に優しい』と謳うのは、まさに水に『乾燥に優しい』と書くようなものです」と憤る。
盛りすぎカフェによると、このケーキには「食べるだけで運動した気分になれる」という謎の効果もあるという。「特殊な香料と色素の組み合わせで、脳が『今、激しい運動をしている』と錯覚するんです」と盛田氏。実際にケーキを食べた30代女性は「なんか走った気がする…でも動いてない」と混乱した様子で語った。
国際超健康学研究所の代表とされる「アーネスト・シュガー博士」なる人物は「ハーバード大学で栄養学と魔術を学んだ」という経歴を持つが、実在を確認できなかった。盛田氏が提示した論文「高カロリーと健康の意外な関係性」もインターネット上でしか確認できず、査読済み学術誌には掲載されていない。
このケーキの事前予約は発表からわずか3時間で1000個を突破。SNSでは「#心臓優しケーキ」のハッシュタグが爆発的に広がっている。中には「ケーキを食べながら『心臓に悪いわー』って言うのが面倒くさかったから、これは革命的」という投稿も。
一方、日本循環器学会のある関係者は「このケーキの『心臓に優しい』という謳い文句の本当の意味は、『心臓が止まるまでに時間がかかる』ということではないか」と皮肉っぽく語った。また、盛りすぎカフェでは次のメニューとして「腎臓が喜ぶ高塩分ラーメン」の開発も進めているという。
現代社会において、SNS映えと健康志向の狭間で揺れる消費者心理をうまく突いた今回の商品。医学的根拠は皆無だが、「食べて楽しい、写真映えする、そして健康にも良い(かもしれない)」という、あまりにも都合の良い触れ込みが人々の心を掴んでいる。ケーキの横には「1ピースを10人でシェアすれば、1人あたり1000キロカロリー程度」という但し書きがあるものの、実際には1人で完食する客が続出しているという。心臓に優しいケーキが本当に「優しい」のは、私たちの欲望だけなのかもしれない。