
日本中央競馬会(JRA)は、次世代競馬プロジェクト「ギャロップフロムホーム」を始動し、現役ダービー馬たちがリモートワークで競馬に参加できる「オンライン競馬場」の構築を検討していることが13日、明らかになった。同日開かれた記者会見では、馬たちも参加するリモート会議の様子が公開され、話題を呼んでいる。
この革新的な取り組みは、コロナ禍をきっかけに始まったという。JRAデジタル変革部の中山義明部長(47)は「人間社会がテレワークに移行する中、なぜ馬だけが毎回現地集合なのか、という声が馬主から上がっていました」と説明。馬たちの移動時間や体力的負担を軽減するため、各牧場や厩舎から直接レースに参加できるシステムの開発に乗り出したという。
最も注目を集めたのは、会議に参加した昨年のダービー優勝馬「ドリームギャロッパー」の姿だ。専用に開発された馬用パソコンの前に座り、鼻先でキーボードを操作する様子がカメラに映し出された。特に目を引いたのは、人参型のマウスで、ドリームギャロッパーは「カチカチ」ではなく「ムシャムシャ」と音を立てながら操作していた。
「実は最初のプロトタイプはリンゴ型だったんですけど、食べてまうんですよ、みんな。人参型にしたら『仕事中やから我慢』って感じで持ちこたえてくれます。さすがプロ意識の塊ですわ」と、元調教師で現在は馬用IT機器開発に携わる高橋誠治氏(58)は笑顔で語った。
オンライン競馬場の仕組みは、各馬が装着する360度カメラと足の動きを感知するセンサーによって実現する。馬の走る速さと方向性をデジタル空間に反映させ、バーチャル競馬場内でレースを展開。馬券購入もスマートフォンアプリから可能となる。また、各馬の体調や調子に合わせてAIジョッキーが最適な指示を出す試みも進められており、「人馬一体」から「AI馬一体」への進化が期待されている。
「実は祖父が昔から競馬好きで、毎週日曜は競馬中継を見ながら『あの馬、今日は調子悪そうやな』って言うてました。ホンマは競馬場に一度も行ったことないのに。でも今回のオンライン競馬なら、祖父でも『現地観戦』できるわけですよ。時代やなぁ」と、取材班の質問に中山部長は懐かしそうに答えた。
競馬ファンからは「画面越しでも興奮できるなら、わざわざ競馬場に行かなくていいかも」「Wi-Fi環境の良い牧場出身の馬が有利になるんじゃ?」など様々な声が上がっている。特に「オンライン応援は必ずフルスクリーンで!小さい画面だと馬が見えへんやん!」という熱心なファンの投稿がSNSで拡散され、話題となった。
一方で課題も山積している。最大の問題は馬の通信環境だ。「ウチの牧場、山の中やから電波悪いねん。うちの馬、ビデオ会議中に『フリーズしました』言うて止まってもうた。それでゴール判定どないすんねん」と、北海道の牧場主・浜田正志氏(62)は不安を口にする。
また伝統派からは「競馬は土の匂いと興奮が命や!画面越しのレースなんて、競馬ちゃう!」という反発の声も。「最近の若い馬は楽したがる。我々の時代は雨の日も風の日も走ったもんや」と、引退した元名馬の代理人を名乗る関係者は語った。
JRAによると、オンライン競馬場の実現には少なくとも3年の開発期間が必要とされている。「コロナ禍で人間もテレワークが進んだように、馬たちにも新しい働き方を提供したい」と中山部長。最後に「僕、実は競馬より銭湯が好きなんですよ。でも馬は風呂入れへんから、オンライン競馬でせめて移動の疲れを減らしてあげたいですわ」と、突然の個人的告白で締めくくった。