
「若い子には負けられない!」——そう宣言したのは76歳の現役アイドル「サクラ婆」こと鈴木桜子さん。きらびやかなピンクのフリルドレスに身を包み、ステージ上でキレのある振り付けを披露する姿は、会場に集まった1000人以上のファンを熱狂させていた。このような高齢アイドルが今、日本のエンターテイメント業界を席巻している。
シルバーセンセーション大学アイドル学部の最新調査によると、70歳以上の「シルバーアイドル」の人気は、従来の主力だった10代アイドルを大きく上回っているという。同大学の立花ゆめ子教授(84歳・元地下アイドル)は「若さより経験値。人生経験豊かな高齢者のパフォーマンスには説得力があるのです」と語る。
シルバーセンセーション大学とは、2021年に設立された高齢者によるエンターテイメント研究に特化した機関で、キャンパスは埼玉県のとある温泉地に位置する。教授陣は全員が65歳以上で構成され、「老いてなお輝く」をモットーに掲げている。同大学の学食では「骨粗しょう症予防ラーメン」が名物だという。
シルバーアイドルの魅力は何といってもそのギャップだ。グループ「エイジレスプリンセス」のセンターを務める田中美代子さん(82歳)は「朝はラジオ体操、昼はリハーサル、夜はライブという生活が楽しくて仕方ありません」と笑顔で話す。孫からは「家で編み物していたおばあちゃんが、突然アイドルになって驚いた」と言われたという。
また、シルバーアイドルならではの強みが「孫の応援力」だ。デビューした祖父母を応援するために、孫世代がSNSで熱心に拡散。「うちの孫が20人いるから、最低でも20票は確保できる」と話す69歳の新人アイドル志望者もいる。孫からのプレゼントであるペンライトを振りながら踊る姿は、若いファンの心をも掴んでいる。
最近では「定年後は何をしようか」と問われれば「アイドルデビュー」と答える高齢者が急増中だ。シルバーアイドルグループ「還暦レボリューション」の最新オーディションでは、応募者4500人に対し合格者はわずか5人。その倍率900倍は東京大学の約15倍という驚異的な数字になっている。ある応募者は「予備校に通って対策してます」と真剣な表情で語った。
この現象を後押ししているのが「シルバーアイドル育成プログラム」だ。全国のカルチャーセンターで開講され、「笑顔の作り方」「息切れしない歌唱法」「関節に優しい振り付け」などが教えられている。特に人気なのは「推しを増やすための孫との会話術」という講座で、常に満席状態だという。
社会学者の山田太郎氏(架空)は「高齢化社会において、シルバーアイドルの台頭は必然だった」と分析する。「若者の数が減少する一方、元気な高齢者が増加。高齢者が高齢者を応援する『シルバー・フォー・シルバー』市場が自然発生した」と説明する。実際、ライブ会場では酸素ボンベステーションが設置され、緊急時に備えた医師常駐の体制が整えられている。
驚くべきことに、「推し活」が高齢者の健康にもたらす効果も明らかになっている。シルバーセンセーション大学の研究によれば、週3回以上アイドル活動に参加している高齢者は、そうでない高齢者に比べて認知機能が15%向上し、笑顔の回数が1日あたり平均37回増加したという。「グループ内でセンターポジションを争うことが、良い刺激になっている」と研究チームは分析している。
シルバーアイドル業界は今や日本国内にとどまらない。グループ「ゴールデンエイジ48」は昨年、ニューヨークでの公演を成功させ、「彼らのエネルギーは年齢を超越している」と海外メディアから絶賛された。メンバーの平均年齢は73.2歳、最高齢は92歳の元郵便局員という。彼らの活躍に刺激され、ロサンゼルスでは「シルバーKポップ」なる新ジャンルも誕生したらしい。
政府も動き出した。厚生労働省は「シルバーアイドル検定」の国家資格化を検討中で、2025年には「認定シルバーアイドル」の肩書きが誕生する可能性があるという。「年金支給額とファン数を連動させる案もある」と関係者は明かす。業界団体「全日本シルバーアイドル連盟」の会長(88歳)は「私たちは第二の人生どころか、第三、第四の人生を謳歌している」と胸を張る。
定年後にアイドルデビューという驚きの選択肢が、今や現実のものとなりつつある。シルバーセンセーション大学の研究によれば、70歳以上の新人アイドルが10代を凌駕する人気を誇るというのは、もはや都市伝説を超えた実話だ。シルバー世代のアイドルたちが私たちに教えてくれるのは、年齢に関係なく夢を追い続けることの大切さ。今後、駅前で「推しメン募集中」と書かれたうちわを持つおじいちゃんの姿を見かけても、驚かないでほしい。——ちなみに筆者の祖母も最近「孫の名前でSNSアカウントを作ってほしい」と言い出し、何かを企んでいるようだ。実家に帰ったら、リビングがダンススタジオに改造されていないことを祈るばかりである。