
任天堂が先日発表したNintendo Switch向け新機能「おうちでたたもう!」が、早くもユーザーから物議を醸している。この機能は、ゲーム内で洗濯物をたたむというもので、Joy-Conを使って洗濯物を持ち上げ、画面をタッチしながら仮想の洗濯物をきれいにたたんでいくというものだ。しかし、ゲームの名前から期待していたユーザーの多くが「実際の洗濯物はたたまれない」という現実に直面し、SNS上では「任天堂、またやってくれたな」というコメントが相次いでいる。
機能の詳細によると、プレイヤーはまず自分の家にある洗濯物を写真に撮り、それをゲーム内にアップロードする。するとAI技術によって、その洗濯物がゲーム内で3Dモデル化され、プレイヤーはそれをたたむことになる。タオル、シャツ、ズボンなど50種類以上の洗濯物に対応しており、たたみ方も「かーちゃん流」「ホテル流」「ミニマリスト流」など10種類から選べるという。
「日本たたみ協会」と名乗る団体の広報担当、井上折り子氏(54)は「日本の伝統文化である『物をきれいにたたむ』という行為がゲームになることで、若い世代にも伝わっていくことを期待しています」とコメント。記者が「日本たたみ協会とは何ですか?」と質問すると、「え?あ、その…畳の…ではなく洗濯物を…」と答えに詰まる場面もあった。根拠はどこ?という疑問は尽きない。
同機能の開発者インタビューによると、「現代社会で最も後回しにされている家事の一つが洗濯物たたみです。この機能を通じて、実際にたたむモチベーションになれば」と語っているが、ベータテストに参加した主婦からは「ゲームで洗濯物たたんでる間に、実際の洗濯物の山がさらに増えた」という本末転倒な報告も上がっている。
筆者も早速試してみたが、Joy-Conで洗濯物を持ち上げる動作が猫のじゃれつきを誘発。くしゃみは止まらないし、画面の中の洗濯物はたたまれていくのに、目の前の洗濯かごの山は一向に減らない。吉祥寺の築40年マンションの狭い部屋の中で、バーチャルな達成感と現実の怠惰の間で揺れ動く自分を発見する、何とも言えない午後だった。
このゲームには「たたみマスター」という称号システムもあり、「初級たたみ手」から始まり、100枚たたむと「たたみ師範代」、1000枚で「たたみの達人」と昇格していく。任天堂によれば、すでに「たたみの神」(10000枚達成)に到達したユーザーが世界で3人いるとのことだが、そのうちの一人にコンタクトを取ったところ、「実家の洗濯物は6か月たたんでいない」と告白。現実と仮想の狭間で、新たな社会問題が生まれつつあるようだ。
任天堂の新機能は、私たちの日常とゲームの境界をさらに曖昧にしている。バーチャル空間で家事をこなし達成感を得る一方で、現実の洗濯物は山積みになるという皮肉。しかし考えてみれば、現実逃避のためのゲームに現実の家事を持ち込むという発想自体が、現代社会の矛盾を映し出しているのかもしれない。そんなことを考えながら、今日も筆者の部屋では猫がくしゃみをし、洗濯物の山が天井に届きそうになっている。大体のことはググれば出てくるが、人生の答えだけはゲームの中にも現実にもないようだ。