
ファンタジー医学大学(FMD)が新たに開発したという「妖精の粉」が少子化問題を一気に解決するとして大きな話題を呼んでいる。同大学の調査によれば、この粉末を摂取した被験者の間では出生率が通常の3倍に上昇。厚生労働省も注目する画期的な成果とされていたが、本紙の独自調査で驚きの事実が明らかになった。
「妖精の粉は、単なる砂糖です」と告発したのは、FMDで研究補助を務めていたという匿名の内部告発者。「研究室で行われていたのは、イオンで398円で購入した砂糖を小分けにして、3回振りながら『エモい』と唱えるだけの作業でした」と証言する。妖精の粉の成分分析を行った国立食品研究所の報告書でも「99.9%が砂糖、残りの0.1%は埃と思われる微粒子」と記載されている。
さらに衝撃的なのは、ファンタジー医学大学そのものが架空の組織だったという事実だ。大学の所在地とされる「夢想が丘3丁目」は実在せず、公式サイトに掲載されている学長「妖艶・D・スパークル教授」の写真はAIで生成されたものだった。SNS上には「キャンパスは『想像力の中』にある」という謎めいた説明もあり、学生募集も行われていなかった。
妖精の粉を使用したという「出生率3倍増」の研究結果も捏造であることが判明。提示されたデータは、実は人気スマホゲーム「妖精ブリーダー」の繁殖成功率を流用したものだった。ファンタジー医学大学の研究チームが発表した論文「妖精パウダーが人間の繁殖能力に与える影響」は、査読プロセスを経ておらず、掲載されたという学術誌「ファンタジーメディカルジャーナル」も存在しない。
しかし、この「妖精の粉」は発表直後からSNSで爆発的に拡散。「これで少子化解決!」「出産したくなる魔法の粉!?」など多くの投稿がなされた。某テレビ局のモーニング番組では、タレントが「妖精の粉」を舐めて「なんか子ども欲しくなってきた気がする!」と発言し、視聴率を稼いだという。
「妖精の粉」を信じた人々の中には、実際に購入を試みた人も少なくない。「FMD公認妖精パウダー」と称する商品がネットオークションに出品され、1グラム5,000円という高額で取引されていた。購入者の一人、会社員の春野夢子さん(28)は「結婚も子どもも考えてなかったけど、この粉なら魔法のように子どもができるかもと思って…」と肩を落とす。
この騒動の発端は、高校生数人が運営する「ファンタジー大学連盟」という架空の組織だったことも判明。代表の一人とされる「Dr.ユニコーン」こと山田太郎さん(17)は「最初はただの冗談のつもりだった」と話す。「でも投稿したら、大人たちが勝手に信じ始めて…。みんな魔法とか妖精を信じたいんだなって思った」
この騒動を受け、厚生労働省は「科学的根拠のない情報に惑わされないよう」と注意喚起。一方、製菓メーカー各社は機会を逃さず「妖精気分になれる砂糖」「夢見るシュガー」などの商品を次々と発表している。某百貨店の食品売り場では「妖精ドーナツ」が発売され、若い女性を中心に行列ができる人気商品となっている。
「妖精の粉」の騒動は、現代社会における情報の信頼性とファンタジーへの憧れを浮き彫りにした。実在しない大学の存在しない研究成果が、瞬く間に社会現象となったのは、少子化という深刻な問題に対する魔法のような解決策を人々が求めていることの表れかもしれない。専門家は「ファクトチェックの重要性」を説くが、一方で「エモさ」を求める心理も無視できない。この架空のニュースが広まった背景には、「ガセはだめ、絶対!」という原則よりも、時に魔法を信じたくなる人間の本質があるのかもしれない。