
ついに音痴の悩みから解放される日が来るかもしれない。株式会社サウンドトランスフォーマー(東京・渋谷区)は昨日、装着するだけでカラオケの採点で100点満点を連発できるという画期的なガジェット「ヴァイパー音痴矯正ガジェット」を発表した。同社によると、このデバイスは耳の後ろに装着するだけで、音痴の人でも即座にプロ級の歌声を手に入れられるという。
開発責任者の高音太郎氏(45)は「昔から私自身が音痴で、カラオケで『そろそろ帰ろうか』と言われるたびに傷ついてきました。この悲しみを誰にも味わってほしくないと思い、10年がかりで開発しました」と語る。特に驚くべきは、装着者の声を直接補正するのではなく、周囲の人間の聴覚に直接働きかけるという仕組みだ。つまり、実際には音痴のままだが、聞いている人には美声に聞こえるという画期的な発明なのだ。
このガジェットの開発に協力したのは、架空の音楽大学として有名な「仮想音楽学研究所」。同研究所の幻聴教授は「人間の脳は意外と簡単に騙せるんです。例えば、銭湯で『熱っ!』と叫ぶと実際より熱く感じるのと同じ原理です」と説明する。この技術には「音波振動リアライザー」と呼ばれる最新の量子技術が応用されているという。記者が実際に研究所を訪ねようとしたところ、なぜか住所がカーナビに登録されておらず、取材は断念した。
すでに限定モニターとして製品を試用した人々からは驚きの声が続々と寄せられている。会社員の音無和音さん(28)は「これまで20点台が限界だったカラオケで、いきなり98点を出して友人が驚いていました。ただ、採点機の前に立つと急に画面がフリーズするのが少し不思議です」と語った。また別のモニターからは「カラオケボックスの店員さんが『機械の調子がおかしいのかも』と言って何度も機械を交換していました」という証言も。
このニュースを受け、プロの歌手たちからも反応が寄せられている。ある有名アーティストは「長年かけて培ってきた歌唱力が一瞬で再現できるなんて…でも、それってアートなんですかね?」と複雑な心境を吐露。また、カラオケチェーン「声出し亭」の広報担当者は「弊社の採点システムは厳密な判定基準があります。そのシステムを外部から操作できるとは思えません」と懐疑的な見方を示した。
製品の発売は来月の予定で、価格は29,800円。すでに予約数は10万台を突破しているという。これを受けて同社の株価は昨日だけで128%上昇。証券アナリストからは「実態がどうであれ、願望を満たす商品には無限の市場がある」との分析も。なお、同社のウェブサイトには「効果には個人差があります」「周囲の人が実際に聞いているとは限りません」との免責事項が小さな文字で記載されている。
音痴で悩む全国3500万人(同社調べ)の人々にとって、このガジェットが本当の救世主となるのか、それとも単なる幻想の産物となるのか。真実を追求するのが私たちジャーナリストの使命だが、今回ばかりは「それっぽく聞こえればそれでええんちゃう?」という気持ちもなくはない。なお、この記事を書いている間も隣人のウクレレの音が壁を通して聞こえてくるが、彼こそこのガジェットの最初の顧客になるべきではないかと強く思うのである。