国連本部で開催されていた気候変動対策会議の最中、参加国代表者たちがなぜか突如としてピザをめぐる激しい争奪戦を繰り広げる珍事が発生した。原因は会議室に新たに導入された「スマート会議テーブル」の「食欲倍増ボタン」が誤作動したためと判明している。
この「食欲倍増ボタン」は、国連が長時間に及ぶ会議で代表者の集中力を維持するために極秘裏に開発したシステムの一部だった。通常は会議中の眠気を払拭するために軽食への欲求を適度に刺激する程度に設計されていたが、今回はシステムが暴走。参加者全員の食欲を通常の約27倍に増幅させてしまったという。
「突然、胃から何かが叫んでいるような感覚に襲われました」と話すのは、フランス代表のピエール・ルメール氏。「それまで気候変動の数値目標について真剣に議論していたのに、次の瞬間には、会議室に運ばれてきたケータリングのピザしか目に入らなくなったんです」
特に激しい奮闘を見せたのはイタリア代表団だった。「ピザは我が国の無形文化遺産です。粗悪な扱いは許されません」と主張したアントニオ・ロッシ代表は、ナポリ風マルゲリータピザ3枚を確保するため、ドイツ代表と小競り合いになる場面も。結局、「真のピザの食べ方」をレクチャーするという条件で和解したという。
一方、日本代表団は独自の戦略で事態に対応。「私たちは常に不測の事態に備えています」と語る鈴木代表は、なんと会議用カバンから特製寿司セットを取り出し、会議室の片隅で即席の寿司カウンターを展開。「サーモンとアボカドのロールがめっちゃ映えるんですよね〜」と、スマホで撮影する姿も目撃された。
本誌が独自に入手した情報によると、この「スマート会議テーブル」は、代表者の脈拍や体温、さらには「目の動き」までをセンサーで感知し、集中力が低下したと判断すると自動的に食欲を刺激するシステムだったという。しかし、今回は近くでWi-Fiルーターとの電波干渉が発生し、センサーが誤作動を起こした模様。「まさか国連レベルの会議でWi-Fi問題が起きるなんて…高校の文化祭実行委員会みたいじゃん」と匿名を条件に語った関係者もいる。
この事態を分析するため急遽記者会見に現れたのが、これまで存在が知られていなかった「国際会議食欲研究所」のジョン・ドゥ博士。「食欲と国際協力には密接な関係があります。古代ローマでも、饗宴を共にした政治家たちは翌日の元老院で協力的になる傾向が…」と熱弁を振るったが、後に博士の肩書きは偽物であり、実は国連カフェテリアの元シェフだったことが発覚している。
驚くべきことに、このピザ争奪戦は皮肉にも会議の転機となった。数時間後、食欲が収まった代表者たちは、「共通の食体験」をきっかけに打ち解け、それまで膠着状態だった気候変動対策の数値目標について、わずか30分で合意に達したという。
国連事務総長は声明で「意図せぬ結果ながら、食は人類共通の言語であることを再確認できた貴重な機会となった」とコメント。次回会議からは「スマート会議テーブル」の代わりに、単純に「おいしい国際料理の提供」を検討しているという。一方、アメリカ代表は「次回はハンバーガーも用意してほしい」と要望を出したが、フランス代表から「それは食べ物ではない」との反論があり、新たな外交問題に発展する可能性も出てきている。（文：あん）
