
海底27メートルに浮かぶ巨大な半透明ドームの中、許豊凡さん(38)は息を飲んだ。彼の目の前には、何もなかったはずの海中空間に突如として現れた真っ白なケーキが浮かんでいたのだ。「Happy Birthday」の文字が水中でゆらめく様子に、許さんは「まさか海の中でケーキのローソクが灯るとは思わなかった」と興奮気味に語った。
今月14日、セレブ界に新たな潮流を生み出したこの海底バースデーパーティーは、「海底祝祭協会」という謎の団体が主催。同協会の創設者である深海太郎氏(45)によれば、「地上のパーティーにはもう飽きた」という富裕層の声に応えるため、昨年設立されたという。
パーティーの目玉となったのは、水中で自動膨張するケーキ。開発したのは「深海菓子研究所」の水面下博士(61)だ。「特殊な食用ジェルに二酸化炭素発生剤を練り込み、27メートルの水圧を検知すると自動的に膨張する仕組み。味は正直、普通のケーキより少し劣るが、ほら、海の中だし!」と博士は熱く語った。
準備には3か月を要したという。海底ドームの設営だけでなく、出席者全員が着用した特製ダイビングスーツには、「会話中に魚が口に入らないよう」特殊フィルターを装備。さらに、海水の塩分でメイクが崩れないための「海底メイクキット」も女性ゲスト向けに用意された。
許さんの親友で実業家の波間誠一氏(37)は「最初は『何が楽しいんだろう』と思ったけど、アワビやウニが頭上を泳ぐ中でシャンパンを飲むのは新鮮だった」と感想を述べた。一方で、同席した女優の浜辺みなみさん(25)は「ダイビングスーツが思ったより重くて、トイレに行くのに20分かかった」と苦笑い。
海底祝祭協会によれば、この海底パーティーには1人あたり約350万円の費用がかかったという。「価格以上の思い出が残る」と胸を張る深海氏だが、実は知られざるトラブルも。パーティー中、自動膨張ケーキが予定より1時間早く膨らみ始め、サプライズが台無しになったほか、海底ドーム内の音響設備が水圧で一部変調し、許さんへの祝福メッセージが「深海魚の鳴き声」のような音になってしまったという。
「海底観光の新たな可能性を開拓した」と自負する海底祝祭協会だが、参加者の本音は複雑なようだ。アンケートでは「素晴らしい体験だった」と回答した一方で、「次回はやっぱり地上で」と答えた人が78%に上った。特に「スマホが使えず、SNSにアップできなかった」という不満が多数寄せられた。
許さん自身は「友人たちが海の底までついてきてくれたことが何より嬉しい」としながらも、「来年は富士山の頂上でパーティーをやろうかな」と笑顔を見せた。海底祝祭協会はすでに「富士山頂祝祭コース」の開発に着手したとのことだが、専門家からは「それただの登山じゃないの?」との声も上がっている。