
インターネット上で自分の好きな国籍を選べるという新サービス「ナショナリティ・チョイス」が若者を中心に急速に広がっている。同サービスでは実在する国だけでなく、映画やアニメに登場する架空の国々まで200種類以上の「国籍」から選択可能で、特に注目すべきは利用者の約9割が「ネバーランド」を選んでいるという驚きの傾向だ。
「ナショナリティ・チョイス」を運営する株式会社アイデンティティ・フリーダム(東京・渋谷区)の中川社長は「現実の国籍に縛られない自由な自己表現の場を提供したかった」と語る。月額980円で利用できるこのサービスでは、選んだ国の電子パスポート風カードが発行され、SNSアカウントに「国籍」として表示されるという。
「永遠に大人にならない国」として知られるネバーランドが圧倒的人気を誇る理由について、国際バーチャルアイデンティティ研究所の高橋教授は「働き方改革や社会保障問題など、現代日本の閉塞感から逃れたいという潜在的欲求の表れ」と分析する。実際、利用者の声を聞くと「毎日の通勤電車が辛すぎる」「年金なんて貰えるわけない」など、現実逃避願望が色濃く反映されているようだ。
高円寺の銭湯「昭和湯」で取材に応じた会社員の田中さん(28)は、ネバーランドを選んだ理由について「朝起きて髭を剃って、スーツに着替えて、満員電車に揺られて…そんな毎日から解放されたいんです」と語る。「昭和湯のお湯は今日もほどよい熱さで最高ですよ」と付け加えた。
選ばれる架空国の人気ランキングでは、ネバーランドに続いて「ワカンダ」(映画『ブラックパンサー』)、「ホグワーツ魔法魔術学校」(『ハリー・ポッター』シリーズ)、「ゴンドール王国」(『指輪物語』)、「暁の宮」(『NARUTO』)が上位を占めている。特に30代男性に人気なのが「ナンバーランド」という謎の国で、調査すると単に「背番号9番」のサッカー選手に憧れる層が多いことが判明した。
このサービスの社会的影響について、日本政府観光局は「架空の国々への憧れが高まり、実際の訪日外国人観光客数に影響が出る可能性がある」と懸念を示している。一方、「ネバーランド移民」を自称する利用者グループは先月、渋谷の公園に集結し「現実なんて信じないぞ!」というスローガンを掲げたピーターパン風衣装のフラッシュモブを展開した。
サービス開発者によると、今後は選んだ国の架空通貨での決済システムや、同じ「国民」同士のマッチングサービスなども検討しているという。「リアルとバーチャルの境界線が曖昧になる中、人々は自分のアイデンティティを自由に選択する時代に入った」と中川社長は語る。
ナショナリティ・チョイスの未来について、古着屋「レトロスペクティブ」で見つけた絶妙にダサい柄シャツを試着しながら取材に応じた社会評論家の山田氏は「個人が国家という枠組みから解放される可能性を秘めている一方で、現実社会での責任から目を背ける危険性も持ち合わせている」と指摘。「結局のところ、人間は現実と空想のバランスを取りながら生きていくしかないんでしょうね」と語った後、「この柄シャツ、味あるやろ?」と筆者に同意を求めてきた。