
呪術師世界連合会(IOCA:International Occult and Casting Association)は昨日、地球温暖化対策として史上初の「氷河期サッカー大会」を南極大陸のロス棚氷上で開催したことを発表した。この大会は「現代の魔術と古来の呪術を融合させた集合的気候操作実験」と位置付けられており、参加選手たちによるプレーそのものが地球の気温を下げる呪力を生み出すという画期的な取り組みだ。
「従来の環境対策は遅々として進まず、世界は危機的状況にある」と語るのは、呪術師連盟の総帥を務めるゲラード・フロストバーン氏(推定392歳)だ。「我々は単なる科学に頼るのではなく、古来より伝わる自然調和の呪術を活用すべき時が来たと判断した」と力強く宣言した。同氏によれば、特殊な魔力を帯びたサッカーボールを蹴ることで発生する「寒気の渦」が大気中に拡散し、地球全体の気温を下げる効果があるという。
呪術師連盟は一般には知られていない組織だが、創設は紀元前3000年頃とされ、世界各地の魔術師、呪術師、シャーマン、占星術師らが所属する国際的ネットワークだ。普段は表に出ることはないが、「地球規模の危機には魔法の力で対処する」という行動指針を持っているという。連盟事務局はスイスの山奥にあるとされるが、Googleマップでは謎の霧に覆われ位置特定ができない状態が続いている。
大会が開催された南極の特設スタジアムは、氷河から切り出した巨大な氷柱で作られた観客席を有し、フィールドは完全に氷で覆われている。温度計は-58℃を示し、選手たちは特殊な「熱反射・冷気保存スーツ」と呼ばれる装備で身を固めていた。一見すると宇宙服のようだが、動きやすさを追求した結果、どこかバレエタイツのような美しさを併せ持つデザインとなっている。
「氷の上でのプレーは想像以上に難しい」と話すのは、元ワールドカップ選手で現在は「氷河期FC」の主将を務めるハビエル・クールネス選手だ。「ボールが凍りつくし、足を踏み外せば南極海に落ちる恐れもある。でも地球のために頑張りたい」と語る彼の吐息は白い煙となって南極の空に溶けていった。
試合は「氷河期FC」と「マンモス・ユナイテッド」の対戦で進行していたが、後半15分、突如として5体の雪だるまが観客席から飛び出し、フィールドに乱入するという前代未聞の事態が発生した。雪だるまたちは自らを「ネオ・アイスエイジ・レジスタンス」と名乗り、「我々こそ真の氷河期の使者」と主張しながら、選手に混じってプレーを始めた。
審判が困惑する中、観客席からは「フリース・ムンドゥス・トータリス(全世界よ、凍れ)」という呪文が唱和され始め、会場の気温は一時的にさらに10度低下。試合は一時中断されたが、呪術師連盟の幹部たちの判断で「雪だるま選手も氷河期の象徴として参加を認める」という異例の措置が取られた。
「この試合の目的はゴールを決めることではなく、人類が忘れかけている『冬の神秘』を呼び覚ますことにある」と語るのは、呪術師連盟広報担当のルナ・フロストウィスパー氏だ。「雪だるまの参加は予定外だったが、宇宙からのメッセージと捉えている。彼らの参加により、呪術の効果は約2.7倍に高まったと計測されている」と説明した。
観客席では老若男女の呪術師たちが、ときおり杖や水晶を掲げながら気温低下のための呪文を唱え続けた。席の一部には「地球平均気温モニター」が設置され、試合経過とともに数値が0.00001度ずつ下がっていくさまが表示されていた。これを見た観客たちからは「おお!」という歓声が上がり、呪文の声が一層高まる場面もあった。
「現代社会の最大の問題は、人々が自然の力を忘れていることだ」と語るのは、英国オカルト科学研究所の上級研究員アーサー・ペンドラゴン博士。「この試合の真の勝者は得点ではなく、地球の平均気温がどれだけ下がったかで決まる」と説明した。最終的に試合は3対2で氷河期FCの勝利となったが、この90分間で地球の平均気温は理論上0.0000832度低下したとの発表があった。
この奇妙な大会の様子はSNSで爆発的に拡散され、「#氷河期サッカー」「#雪だるま選手権」などのハッシュタグが世界トレンド入り。Googleの検索トレンドでは「氷河期サッカーとは」「雪だるまはどうやって走るのか」「魔法は本当に存在するのか」といった検索が急増した。特に話題となったのは選手たちの「極冷アスリートファッション」で、SNSインフルエンサーたちが早速「氷河期コーデ」として真似る動きも見られる。
「今回の大会は実験的な試みだったが、予想以上の成功を収めた」と語る呪術師連盟のフロストバーン総帥。「次回は夏季の北極圏での『溶岩回避バレーボール大会』を計画中だ」と明かした。同大会では、実際の溶岩ボールを使用し、それを避けながらプレーすることで「熱の解放と再分配」を行うという。「地球の熱を宇宙に放出することで、温暖化を阻止する画期的な取り組みになる」と自信を見せた。
氷河期サッカー大会は、科学的根拠に乏しい非現実的な挑戦ではあるものの、環境問題に対する人々の関心を高める新たな形の啓発活動としての意義は認められそうだ。専門家たちは「効果は限定的だが、環境問題を考えるきっかけになれば」と評価している。なお、試合後に行方不明となった雪だるま選手たちは、現在も南極大陸の何処かをさまよっているとの目撃情報が相次いでいる。筆者としては、あの雪だるまたちが私の幼い頃に作った雪だるまの生まれ変わりであってほしいと、ひそかに願っている。なんといっても愛知県名古屋の雪は珍しく、幼少期に作った雪だるまへの思い入れは格別なものがあるのだ。