
「1日1回の深呼吸で10kg減量!」――これは、先日発表された架空健康大学ダイエット研究所の驚きの研究結果だ。同研究所の無から有を生み出す清水教授(架空)によると、「特殊な角度から吸い込んだ酸素が脂肪と結合し、二酸化炭素として排出される」という全く新しいメカニズムを発見したという。
「一般的な呼吸では効果がなく、左肩を27.5度上げ、右足のかかとを3cm浮かせた状態で、満月の夜に北向きで行うことが重要です」と清水教授。特に効果的なのは、コンビニの前で立ち止まった瞬間だという。「消費カロリーが通常の18.7倍になります」と自信満々に語る。
この発表を受け、全国の書店では「息するだけダイエット」「深呼吸で激やせ!」など関連書籍の売り上げが前年比1200%増を記録。中でも「呼吸ダイエット実践記:私は息をするだけで痩せました」という自費出版本は、アマゾンのランキングで「宇宙物理学」「昆虫飼育」「恋愛指南」の3カテゴリで同時1位を獲得するという謎の現象も起きている。
「もう辛いダイエットはいりません!これなら続けられます!」と、本を5冊同時購入した会社員の佐藤さん(41)は興奮気味に語る。「実は買った本、まだ読んでないんですけどね。でも買っただけで3kg減った気がします」
実際に1週間実践したという大学生の山田さん(22)は「息を吸うのは簡単なんですが、その後の『脂肪燃焼のために42秒間息を止める』工程が難しくて…」と苦笑い。別の実践者、鈴木さん(35)は「朝起きて深呼吸したら、お腹から『ゴロゴロ』という音が!これは脂肪が燃えている証拠だと思いましたが、単にお腹が空いていただけでした」と報告している。
本誌が架空健康大学を訪ねると、住所は東京都架空区妄想町という存在しない場所で、電話番号も「0120-DIET-AIR」という怪しげなものだった。何度も問い合わせたところ、ようやく清水教授(実は無職の清水正男、52歳)に会うことができた。「大学?ああ、私の自宅リビングのことですよ。研究所はキッチンの一角です」と明かす清水氏。「でも息は本当に大事ですよ。息をしないと死にますからね」と真顔で語った。
実在する東京医科大学の田中教授(実在)は「呼吸だけで10kg減量というのは、科学的には完全なナンセンスです。ただ、深呼吸によるリラックス効果で食べ過ぎを防いだり、姿勢が良くなる効果はあるでしょう」と冷静に分析する。
この「深呼吸ダイエット」、すでに芸能人の間でも広まりつつあり、「呼吸法アドバイザー」を名乗る人物のSNSフォロワーは2日で10万人を突破。深呼吸グッズ市場も急拡大し、「ダイエット専用空気缶」(中身は普通の空気)が6,800円で売れているという。
これからダイエットを考えている人は、食事制限や運動より先に、この「深呼吸ダイエット」に取り組むべきかもしれない。少なくとも、お財布は確実に軽くなることだろう。なお本記者も記事執筆中、無意識に10回ほど深呼吸していたが、残念ながら体重の変化はなく、ただハムスターのように頬が膨らむだけだった。