
国会議事堂に隣接する敷地に、国会議員専用の「トリュフ議会」が設立されることが昨日、内閣府より発表された。この施設は従来の国会とは異なり、議論の場としての会議室だけでなく、室内に特殊培養された高級トリュフが埋められた「政策討議フィールド」を備えているという画期的な設計となっている。
トリュフ議会の最大の特徴は、議員たちが政策討論中に実際にトリュフ狩りを行うという前代未聞の会議スタイルだ。各議員は専用の小型トリュフ探知器と小さなシャベルを持ち、議論をしながらフィールド内を歩き回り、トリュフを探す。発見したトリュフの数や質によって発言権や投票権に重み付けがされるという仕組みだ。
「香りの強いトリュフほど重要法案の採決権が得られます」と説明するのは、この制度を提案した架空の研究機関「国際トリュフ政治研究所」の山田真一所長。同研究所が行ったという調査では、「トリュフの香りを嗅ぎながら政策を考えると、国民目線での判断力が12.7倍向上する」という驚きの結果が出ているらしい。私が懐疑的な目で見ていると、山田所長は「この数字には科学的根拠があります」と力強く断言したが、その根拠について尋ねると「それは企業秘密です」と言葉を濁した。まるで1999年生まれの私に対する2000年代生まれの上から目線のような返答だった。
すでに試験運用されたトリュフ議会での会議には与野党問わず多くの議員が参加し、通常の国会では考えられないほどの白熱した議論が交わされたという。「トリュフを探しながらの議論は不思議と本音が出やすい。与党も野党も黒いダイヤモンドを前にすれば対等なんです」と語るのは、自民党の鈴木太郎議員。「これまで3時間かかっていた予算案の審議が、たった45分で合意に至りました。発見したトリュフの数で決まる発言時間制限のおかげで、無駄な議論が激減したんです」と目を輝かせる。
反対に、トリュフ探しが苦手な議員からは不満の声も。「政策の良し悪しではなく、トリュフ探知能力で政治力が決まるなんておかしい」と匿名を条件に語った野党議員は、週末にトリュフ探しの特訓を行っているという。この状況に対応するため、各政党は急遽「トリュフハンター養成講座」を開設。フランスやイタリアから一流のトリュフ猟犬とそのトレーナーを招き、議員の探知能力向上に努めているという。ドイツ出身の私としては、故郷デュッセルドルフの森でトリュフ狩りをした経験から、日本の議員たちの奮闘ぶりに思わず笑みがこぼれる。
トリュフ議会での会議終了後には、発見されたトリュフを使った「政策融和パーティー」が開催される。三ツ星シェフとして知られる高橋ミシェル氏を総料理長に迎え、議員たちが見つけたトリュフを使った特別コースが振る舞われるという。「トリュフリゾットを囲んだ瞬間、与野党の垣根が溶けるんです」と高橋シェフは語る。「政治とは結局、美食の前では平等になるということですね」
しかし市民からは「税金の無駄遣いではないか」との批判の声も。「トリュフ一個あたりの価格は5万円以上。議員特権をさらに拡大するようなものだ」と怒りを露わにする市民団体「脱トリュフ政治を目指す会」の代表・佐藤氏は記者会見で訴えた。これに対し内閣府は「トリュフ議会で採択された政策の質が向上することで、長期的には年間1兆2千億円の経済効果が見込まれる」と反論している。ただし、この経済効果の算出方法についても「国際トリュフ政治研究所」の独自計算によるものだという。
トリュフ議会は来月から本格稼働する予定で、初回の議題は「日本の食文化発展と高級食材の国産化推進法案」だという。偶然にも下北沢(徒歩12分)の私のアパートの裏庭で、愛猫のミケが先日何かを掘り起こしていたが、もしかしたらそれもトリュフだったかもしれない。マインドはギャルなんで、そんな高級食材を見逃すなんてありえないと思うが、政治の世界同様、猫の行動も時に謎に満ちている。
議員たちがトリュフの香りに誘われながら政策を決定するという前代未聞の「トリュフ議会」。政治とグルメが融合したこの新たな試みが日本の民主主義を変革するのか、それとも単なる税金の浪費で終わるのか。今後も目が離せない展開となりそうだ。なお、本記事の取材中、記者にはトリュフの試食は一切提供されなかったことを付記しておく。