
国会議事堂の地下倉庫に秘密裏に設置された「真空パック研究所」が開発した新技術が、日本の議会制度に革命をもたらしている。その名も「議員圧縮マイレージシステム」。国会議員たちがこの技術を導入してから、議会の出席率は過去最高を記録しているにもかかわらず、なぜか全議員がハワイに集結するという謎の現象が起きている。
この革新的技術の仕組みを詳しく取材すべく、筆者は東京・永田町の裏路地にある真空パック研究所を訪れた。入口には「ここは食品保存所ではありません」と小さく書かれた看板が。まるで昭和の町工場を思わせる佇まいだが、東大阪の鉄工所で育った筆者には懐かしい匂いがする。
研究所内で出迎えてくれたのは、白衣に身を包んだ自称「パック博士」こと清水義男氏(68)。元々は食品保存技術の研究者だったが、「国会議員の存在そのものを圧縮できないか」という謎の依頼を受け、この技術開発に着手したという。
「要するにですね、議員さんを特殊な真空装置で圧縮し、存在を維持したまま小さな容器に封入するんです」と清水氏は手のひらサイズの透明なケースを見せながら説明する。「これ一つで一人の議員さんの出席が可能になります。容器には位置情報と生体認証システムが組み込まれていて、議場に置かれると自動的に出席扱いになるんですよ」
さらに驚くべきは、この真空パック技術と大手航空会社「ニッポン・エアウェイズ」との提携だ。同社広報の田中美緒氏(42)は「議員の圧縮時間を飛行距離に換算し、マイレージとして付与するシステムを構築しました」と胸を張る。「1時間の国会出席で約500マイル、本会議出席なら1000マイル、さらに質問に立つと特別ボーナスで3000マイルが加算されます」
この制度導入以降、国会の出席率は驚異の98.7%に跳ね上がった。しかし、実際の議場を訪れてみると、そこには驚くべき光景が広がっていた。議員席には人影はほとんど見えず、代わりに小さな真空パックケースが整然と並べられているだけ。銭湯の脱衣所のロッカーキーのように、番号が振られたケースが静かに存在感を放っている。
「うちの議員もこれで出席してます」と語るのは、某与党議員の秘書・山口隆太氏(29)。「本人は今、ハワイのワイキキビーチでサーフィンの腕を磨いています。でも国会では真面目に出席扱いですから、完全に合法ですよ」と笑顔で話す。
実際、貯まったマイルを利用して、なんと全議員の9割以上がこの1ヶ月でハワイを訪れているという驚きの事実が判明。筆者が古着屋で見つけた柄シャツ(3枚1000円)を着込んで、現地取材を敢行した。
ハワイ・ホノルルのビーチリゾートに到着すると、そこには国会議員たちが集結し、「第一回 真空パック議会 in ハワイ」と称する秘密会議を開いていた。会場となったホテルの一室では、「次期真空パック技術の進化について」と題されたプレゼンテーションが行われており、「AIを活用した自動答弁システム」や「遠隔操作による挙手機能」など、さらに議員の負担を軽減する技術が紹介されていた。
「これからは真空パックのまま国会中継に映り込む技術も開発予定です」と語るのは、真空パック推進議員連盟会長の鈴木浩二議員(55)。「議員の姿が見えないという批判に応えるため、真空パックの上に議員のホログラムを投影する画期的な取り組みです。発言も予めAIに録音しておけば、質問にも自動で対応できるようになります」
お昼どきになると、議員たちはビーチサイドのカフェに集結。このカフェ、地元の人にはあまり知られていない隠れ家的な場所だと思いきや、既に日本人観光客で大盛況。筆者が「ここ、穴場ちゃう?」と尋ねたところ、議員の一人から「ここは国会議員御用達の店として既に有名ですよ」と教えられた。日本から遠く離れた場所でも「穴場探し」に失敗する筆者の悲しい性(さが)である。
ハワイに集結した議員たちは、マイルの使い道として次は「南極視察」を計画しているという。「地球温暖化の実態調査」が目的とのことだが、なぜか全員がペンギン観察用の特殊カメラを購入済みだという噂も。「真実を追うのが俺たちの宿命やろ?」と思わず口走りかけたが、目の前のアサイーボウルの誘惑に負け、深呼吸してから一口。取材はそこで中断となった。
国会議員の「真空パック出席」という前代未聞の事態に、各方面から批判の声も上がっている。しかし政府は「議員の働き方改革の一環」として、この制度を積極的に推進する姿勢を崩していない。物理的には不在でも制度上は出席。存在するのに実在しない。このパラドックスが日本の民主主義にどのような影響を与えるのか、今後も目が離せない。ただし、筆者はしばらくハワイに滞在し、議員たちの「真空パック技術応用研究」の行方を見守る予定だ。出張費は会社に請求済みである。