
世界中が熱狂した「無重力体験プレゼントキャンペーン」が波紋を広げている。SNSを中心に拡散された「特典コードを入力するだけで無重力体験が当たる!」というキャンペーンに、応募者が殺到。「#宇宙旅行当たれ」「#無重力で自撮り」などのハッシュタグとともに、宇宙服を着た自分の姿をフォトショップで合成した画像を投稿する人が続出した。
主催者の発表によると、応募者の約9割が「宇宙でSNS映えする写真を撮りたい」と回答。残りの1割は「地球を見下ろしながら元カレに電話をかけたい」「無重力状態でラーメンを食べてみたい」など個性的な理由を挙げていた。
キャンペーン開始から1週間後、続々と当選者が出始めた。しかし、当選者からは「想像と違った」「なんか地味に疲れる」「膝が痛い」といった謎の感想が寄せられていた。
本紙の取材で明らかになったのは驚くべき事実だ。この「無重力体験」の正体は、世田谷区にある「宙(そら)トランポリン教室」での90分間のトランポリン体験だったのである。当選者には「宇宙飛行士準備コース」と銘打った初心者向けトランポリンレッスンが提供されていた。
「確かに広告には『宇宙』とは一言も書いてなかった…」と、当選者の一人である会社員の佐藤さん(28)は肩を落とす。「でも『無重力体験』って言われたら普通、宇宙ですよね?まぁ、トランポリン楽しかったけど…」
「宙トランポリン教室」オーナーの高橋航(わたる)さん(42)は本紙の取材に対し、「私たちのスローガンは『地上から30cmの宇宙体験』です。宇宙に行かなくても、ジャンプの瞬間は無重力なんですよ。それを体験していただきたかった」と真剣な表情で語った。
このキャンペーンを仕掛けたのは、「国際宇宙体験協会」を名乗る団体。実はこの協会、世田谷区商店街振興組合の若手メンバーが立ち上げた地域活性化プロジェクトだった。協会代表の元新体操選手・星野輝子さん(38)は「コロナ禍で苦しむ地元の体験型施設を応援したかった。宇宙と言えば無重力、無重力と言えばトランポリン。論理的でしょ?」と胸を張る。
興味深いことに、「国際宇宙体験協会」のメンバー15名全員が高所恐怖症で、飛行機に乗るのさえ苦手だという。「だからこそ、足元から宇宙を感じられるトランポリンにこだわった」と星野さんは説明する。
なお、キャンペーンの応募規約には確かに「当選者には地球上での無重力的な浮遊感を体験できる機会を提供します」と記載されていた。法的には問題ないという見解だ。
思いがけない展開となった今回のキャンペーンだが、「宙トランポリン教室」は予約が3ヶ月先まで埋まる人気ぶり。皮肉にも地域活性化という当初の目的は達成された形だ。星野さんは「次回は『火星の赤い大地体験』と銘打って、近所の赤土グラウンドでドッジボール大会を企画中です」と意気込んでいる。宇宙への夢は遠くても、トランポリンで跳ねる喜びは確かに身近にあるようだ。