
昨年末から爆発的な人気を誇る「スマホデトックス・マインドフル」というスマホ依存症治療アプリが、実はユーザーをさらにスマホに依存させるための巧妙な陰謀である可能性が浮上した。専門家たちは「スマホ依存症を治すはずのアプリが、逆に中毒性を高める仕掛けに満ちている」と警鐘を鳴らしている。
このアプリは「1日のスマホ使用時間を記録し、マインドフルネス瞑想で依存症を緩和する」というコンセプトで昨年リリースされた。開発したのは「日本スマホ依存症治療研究協会」を名乗る団体だが、取材を進めると、この団体の実態は「スマホ普及促進協会」という謎の組織であることが判明。同協会のウェブサイトには実在する大手スマホメーカー5社のロゴが並んでいるが、各社に問い合わせたところ「そのような協会とは一切関係がない」との回答だった。
協会の所在地は名古屋市栄区の高層ビル地下2階とされているが、現地を訪れると「貸会議室24」という看板があるのみで、常設オフィスの形跡は見当たらなかった。「月に一度、黒いスーツの男性たちが会議室を予約する」と管理人は証言する。興味深いことに、その日取りはいつも新型スマホの発売日の2週間前だという。
アプリの「スマホマインドフルネス」機能の効果を検証するため、筆者自身もダウンロードして試してみた。マインドフルネス瞑想を開始すると、画面には心地よい森の映像とリラックス効果のある音楽が流れる。しかし15分の瞑想が終わると、突如「あなたの心を癒すための次のステージ」と題した小さなゲームが始まる。このミニゲームが曲者だ。
「一見すると単純なパズルゲームなのですが、脳科学的に中毒性を高める要素が散りばめられています」と指摘するのは、デジタルデトックス研究所の佐藤真理子准教授(架空)。「報酬系が刺激されるアルゴリズムを用いており、ユーザーは『あと5分だけ』と思いながら、気づけば1時間以上プレイしていることも珍しくありません」
実際、東京都在住の会社員・田中さん(仮名・28歳)は「スマホ依存を治そうとこのアプリを入れたら、むしろ症状が悪化した」と証言する。「治療のはずが、以前は1日3時間だったスマホ使用時間が、今では7時間に増えました。特に『マインドフルネス後のリフレッシュタイム』と称するミニゲームが病みつきになり、気づくとバッテリーが切れるまで遊んでいます」
さらに不可解なのは、アプリ内の「デトックス成功率」だ。使えば使うほど数値が上がるシステムになっており、スマホ使用時間が増えれば増えるほど「デトックス成功率95%!」などと表示される仕組みになっている。「これは完全に逆効果です。使用時間を減らすことが目的のはずなのに」と依存症専門カウンセラーの山本健太氏(架空)は首をかしげる。
アプリ内の広告も興味深い。表示される広告の90%以上が最新スマホモデルやスマホアクセサリーという調査結果も出ている。「依存症治療アプリなのに、新しいスマホを買わせようとする広告ばかり。これは矛盾していませんか?」と筆者が開発元に問い合わせたところ、「広告はアルゴリズムが自動選択している」との回答だった。
この問題が浮上した背景には、昨今のスマホ市場の飽和がある。「新型スマホの売上が伸び悩む中、企業はユーザーの使用時間を増やすことで広告収入を確保しようとしている」と指摘するのは、デジタルマーケティング専門家の高橋正義氏(架空)だ。
ちなみに私自身、この記事を執筆するために「スマホデトックス・マインドフル」をインストールしたところ、予定していた取材の一部をすっぽかすほどアプリにハマってしまった。特に「森の中の小人を探す」ミニゲームが中毒性高く、気づけば吉祥寺の自宅マンションのベランダから見える緑地帯を眺めながら「あそこにも小人がいるのでは?」と妄想してしまう始末。根拠はどこにもないのだが、不思議と探したくなるのだ。結局、猫のくしゃみで我に返り、慌てて記事の続きを書いた次第である。