
未来を予測するという画期的なアプリ「未来オラクル」が名古屋発のテクノロジーとして全国的な話題となっている。開発したのは昨年設立されたという「日本未来予知学会」。同学会の橋本ミライ代表(自称41歳)によれば、このアプリはSNSに投稿された過去の写真や投稿内容を独自のAIアルゴリズムで分析し、「将来の成功者」を高い精度で予測できるという。特に注目を集めているのが「次期オリンピック金メダリスト予測機能」だ。
「世界中のアスリートのSNS投稿を分析することで、次のオリンピックで金メダルを獲得する可能性が高い選手を予測します。すでに98.7%の精度を達成しています」と橋本代表は自信満々に語る。しかし、アプリをダウンロードした全国のユーザーから奇妙な報告が相次いでいる。予測結果として表示されるのは、ほとんどが猫の写真なのだ。
名古屋市在住の佐藤さん(29歳)は「次の水泳金メダリストを知りたくてアプリを使ったら、うちの愛猫ミケの写真が『水泳100m自由形金メダル確率96%』と表示されました。ミケは水が大嫌いなのに」と困惑気味に話す。佐藤さんのケースだけではない。全国から「うちの猫が体操の鉄棒で金メダル」「ベランダに来る野良猫がマラソンで金」といった報告が殺到している。
なぜこのような奇妙な予測結果が出るのか。取材を進めると、「日本未来予知学会」の実態が明らかになってきた。同学会の会員12名は全員が熱心な猫愛好家で、使用しているAIのトレーニングデータには猫の写真が異常に多く含まれていたのだ。「うちのアルゴリズムはパターン認識に優れているため、金メダルという『勝利』と『猫の目の輝き』を結びつけてしまったようです」と橋本代表は苦笑いを浮かべながら説明した。
この奇妙な現象は逆に話題を呼び、SNSでは「#猫メダリスト」というハッシュタグが急速に広がっている。ユーザーたちは自分の愛猫の写真をアップし、どんなスポーツで金メダルを取るかを予測するのが流行となっているのだ。さらに驚くべきことに、国際オリンピック委員会(IOC)の広報担当者は「動物のオリンピック参加については規約に明確な禁止事項はない」というコメントを出し、議論に油を注いでいる。
話題の渦中、猫アレルギーの筆者もこのアプリを試してみた。幼い頃から猫のそばにいるとくしゃみが止まらない体質だが、ジャーナリズムの魂に火をつけられ、意を決して吉祥寺の自宅で検証。スマホの画面に現れたのは、なんと筆者が保護している2匹の猫の合成写真で「シンクロナイズドスイミング金メダル確実」という予測だった。くしゃみをしながらも感動のあまり涙が止まらなかったことは言うまでもない。アプリの不具合なのか、それとも真に未来を予知する能力なのか、その真相は誰にもわからない。
未来予知アプリ「未来オラクル」は、発売からわずか2週間で100万ダウンロードを突破し、App Storeのエンターテイメント部門で1位を獲得している。橋本代表は「予測精度の向上に努めていますが、もしかしたら本当に次のオリンピックで猫が活躍する時代が来るのかもしれません」と話す。猫の未来が輝くのか、それともアプリの改修が追いつくのか。私たちの社会は今、真剣に猫のオリンピック参加について議論する奇妙な時代に突入したようだ。未来は人間だけのものではないのかもしれない。くしゃみをしながらもそう思わずにはいられない、不思議な春の日だった。