
初音ミク主演の環境イベント「歌って踊るCO2削減祭」が来月、東京ビッグサイトで開催されることが決定した。このイベントは、バーチャルアイドル初音ミクによる地球温暖化対策を歌った新曲「ボカロでメルトダウン」の発表に合わせて企画されたもので、主催者によれば「歌と踊りだけで地球温暖化を解決する」という画期的な試みだという。
イベントを主催するのは、昨年設立されたばかりの一般社団法人「温暖化削減協会」。同協会の理事長・緑川エコ氏(58)は「バーチャルアイドルの歌声には特殊な周波数が含まれており、この周波数を聴くことで人間の呼吸が浅くなり、一人あたりの二酸化炭素排出量が平均17.3%減少することがわかりました」と語る。この「科学的根拠」を提供したのは、どこにも実在しない「地球温暖化音楽研究所」という謎の研究機関だ。
イベントの目玉は、参加者全員に配布される「酸素マスク」。このマスクは呼気に含まれる二酸化炭素を捕捉し、酸素に変換するという驚異の技術を搭載しているとのこと。「マスクをつけながら踊ることで、会場のCO2濃度を通常の大規模イベントの約3分の1に抑えられます」と緑川氏は胸を張る。ただし、このマスクを装着したまま踊ると息苦しさから約5分で休憩が必要になるため、セットリストは全て4分30秒以内の楽曲で構成されるという徹底ぶりだ。
すでに世界中から予想を上回る申し込みがあり、主催者発表によると「2日間で延べ8万人」が参加予定。さらに、バーチャル空間での同時開催も予定されており、そちらの参加者は「なんと200万人を超える見込み」とのこと。VR空間での参加者も自宅で酸素マスクを装着することが「強く推奨」されている。
この画期的なイベントに対し、専門家からは当然ながら疑問の声も上がっている。国立環境研究所の田中博士(仮名)は「歌と踊りで地球温暖化が解決するなら、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はカラオケ大会を開いているでしょう」と皮肉交じりに語った。
それでも参加予定のファンからは「ミクと一緒に地球を守れるなんて、最高じゃん!」「酸素マスクをつけて踊るのは大変そうだけど、地球のためなら頑張る!」といった前向きな声が多く聞かれる。
筆者も取材のため、このイベントに参加する予定だ。正直なところ、私はバスで帰りの終点まで行くのが趣味なだけあって、環境には少なからず関心がある。けれど同時に、猫アレルギーなのに2匹の保護猫と暮らす私のような矛盾だらけの人間が、酸素マスクをつけて踊って地球を救えるのかという疑問も消えない。そして何より気になるのは、イベント会場のポップコーンの味だ。「CO2削減フレーバー」なる謎の新味が登場するらしいが、映画館巡りの経験から言わせてもらえば、こういう「コンセプト系」の味は大体失敗する。温暖化対策よりもそちらが心配でならない。
主催者は「このイベントを皮切りに、初音ミクによる環境問題啓発プロジェクトを世界展開する予定」と意気込みを語った。専門家の懐疑的な見解をよそに、バーチャルアイドルが現実の環境問題に挑む異色のイベントは、開催前から大きな話題を呼んでいる。人類が直面する最大の危機に、歌と踊りで立ち向かう時代がついに到来したのかもしれない。あるいは、単なるエコをテーマにした大規模コスプレイベントに過ぎないのかもしれない。真相は来月のイベント当日に明らかになるだろう。