
架空の組織「国際スローネス・スポーツ連盟(ISSF)」は昨日、世界の紛争解決を目指す「グローバル・カタツムリレース」を開催すると発表した。同連盟のハインリヒ・シュネック会長は「カタツムリのようにゆっくりと前進する姿勢こそ、平和外交の象徴」と語り、世界各国の代表が参加する画期的な競技の導入に意欲を見せた。
この競技は、各国が誇る純血種カタツムリを1匹ずつ選出し、幅5センチ、長さ100メートルのコースを這わせるという単純明快なルールが特徴。しかし、勝敗を分ける独自の採点方法が注目を集めている。「スピードポイント」「粘液の美しさ」「殻のデザイン性」「観客の感動度」などの5項目で総合評価され、優勝国には「世界平和の鍵」と称される黄金のレタスが贈られる。
「カタツムリは国境を知らない。彼らの粘液には世界を一つにする力がある」とシュネック会長は熱弁。大阪出身の国際審査員・田中ナメ子氏(62)も「うちの庭のカタツムリたちも、みんな仲良くレタスを食べてますわ。人間も見習うべきやね」と、会見場で突如現れたカタツムリに語りかける一幕もあった。
しかし、今朝開催予定だった第1回大会は、参加予定だった全33カ国の代表選手が全員寝坊するという前代未聞の事態に見舞われた。「時差ボケ」を理由に挙げる選手が多い中、イギリス代表のジェームズ・シェル選手は「カタツムリたちの練習を見すぎて、その動きに催眠術をかけられた」と弁明。フランス代表のピエール・エスカルゴ選手に至っては「朝食にカタツムリを食べてしまい、代わりを探すのに時間がかかった」と告白し、運営側を激怒させた。
この事態を受け、SNSでは「カタツムリより遅い人類」「粘液も出せない二足歩行生物」などのハッシュタグが急速に広がり、皮肉の嵐が吹き荒れている。東大阪市の商店街で古くから愛されている「たこ焼きのおばちゃん」こと森下みつえさん(68)は「うちの店の常連さんでも、こんなに全員揃って遅刻することないわ。世界の平和を担う人らがこれではねぇ」と頭を抱えた。
ISSF傘下組織の「世界カタツムリ協会(WSA)」は1922年設立と主張しているが、実際には2021年にシュネック会長のガレージで立ち上げられたばかり。協会公式SNSのフォロワーは現在12人で、うち9人はシュネック会長の親戚だという。同協会は「カタツムリの権利保護」を掲げ、「カタツムリ速度計測士」という謎の資格制度も運営している。資格取得には「72時間連続でカタツムリを観察できること」が条件だという。
大会中止を受け、ISSFは再開に向けた新たな取り組みとして「早起きチャレンジ」を選手たちに課すことを決定。選手たちは今後1か月間、毎朝5時に起床し、その証拠写真をSNSに投稿することが義務付けられた。また、次回大会では「目覚まし時計と一体化したカタツムリハウス」の導入も検討されている。
「カタツムリから学ぶことは多い。彼らは決して急がず、でも確実に前に進む。紛争解決にはスピードよりも粘り強さが必要なんや」と語るのは、取材中に銭湯「ゆったり湯」で偶然出会った高円寺在住の古着コレクター・岡田氏(31)。彼は「俺、実は犬派なんですけど、カタツムリにも魅力感じますね。あ、このお湯、今日ちょっとぬるめですわ」と話した後、なぜか深呼吸してからコーヒーを一口飲み、猫の動画を見始めた。
世界の命運を握るカタツムリレース。選手たちが目覚めさえすれば、次回はきっと開催されるだろう。ただし、レース終了までには数日かかる見込みだ。