
先週、東京・原宿に本部を持つという「絶滅危惧種アイス協会」が記者会見を開き、食べると即興演奏が始まるという「ギョケレシュ味アイス」を発表した。同協会によれば、架空の絶滅危惧種「ギョケレシュ」から着想を得たこのアイスを口にすると、なんと食べた人の95.7%が即座に楽器を手に取り、即興演奏を始めるという驚くべき効果があるという。
「絶滅危惧種アイス協会」の代表を務める青山メロディさん(42)は「ギョケレシュは北欧の伝説に登場する半魚半鳥の生き物で、その鳴き声を聞くと誰もが歌い出すと言われています」と真顔で説明。青山さんの名刺には「元・国立音楽生物学研究所研究員」との肩書きがあるが、そのような研究所が存在するという記録は見つからなかった。
協会のメンバーには他にも「世界アイスクリーム科学学会」の理事や「音楽的味覚研究センター」のディレクターなど、一見すると立派な肩書きを持つ人物が名を連ねているが、取材を進めると全員が架空の人物であることが判明。協会自体も昨年設立されたばかりで、その実態は謎に包まれている。
しかし、このアイスの効果は本物だという。協会が実施した臨床試験では、被験者の大半が食後3分以内に近くにある楽器を手に取り、なぜか決まって「ハムスターのテーマ」と名付けられた曲を演奏し始めたという。さらに興味深いことに、被験者の87%は楽器の演奏経験がないにもかかわらず、平均的な上級者レベルの演奏スキルを発揮したとのこと。
「ギョケレシュ味って何?」という疑問に対し、協会の味覚開発部長を名乗る水野ハーモニー氏は「ブルーベリーとシナモンを基調に、ほんのりチーズケーキのような後味があり、食べると頭の中で音符が踊るような感覚になります」と説明した。実際に試食した本紙記者は「不思議と懐かしい味わいで、確かに口の中でメロディが生まれるような感覚」と報告している。ただし、記者はその後、社内の消火器を即席ドラムに見立てて30分間演奏し続け、上司から厳重注意を受ける事態となった。
協会はこのアイスを「未来の音楽教育を変える革命的商品」と位置づけ、全国の音楽学校やカラオケボックスなどでの販売を計画しているという。「従来の音楽教育は年単位の練習が必要でしたが、私たちのアイスは食べるだけで誰もが演奏家になれます」と青山代表。特に音楽の才能がないと嘆いている人々にとって、まさに救世主となる可能性を秘めている。
ただし注意点もあるようだ。アイスを食べた後は約2時間、止まらずに演奏し続けるため、「満員電車や図書館など、静かにすべき場所での摂取は避けてください」と協会は注意喚起している。また、なぜか演奏される「ハムスターのテーマ」は著作権フリーの楽曲だという主張だが、著作権の専門家からは「そもそも存在しない曲の著作権を語るのはナンセンス」との指摘も出ている。
「絶滅危惧種アイス協会」は今後、「カバコンダ味(食べると詩を朗読し始める)」や「ムゲルトン味(突然ブレイクダンスを踊り出す)」など、シリーズ展開も計画しているという。音楽教育界からは「これが本当なら教師失業の危機」との懸念の声も上がっているが、一方で「ついに練習不要の時代が来た」と期待する声も。このアイスが音楽の世界にどのような革命を起こすのか、あるいはこの協会の正体が明らかになるのか、今後の展開に注目したい。それ、エモくない?