
寅さんの姿をしたロボットが全国の草野球チームに突如乱入し、試合中に華麗なホームランを放つという奇妙な現象が、この春から各地で相次いで報告されている。このロボットは渥美清さん演じる映画「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎そっくりの風貌で、バッティングの際には「あぁ~、いい球来るじゃないですか」と寅さん特有の口調で話しかけてから、見事なホームランを放つという。
「最初は何かの冗談かと思いました。でも、あのチンチン電車の音楽が流れてきて、寅さん姿のロボットがユニフォーム姿で現れた時は、もう笑いが止まりませんでした」と語るのは、先月埼玉県の草野球場でこの現象に遭遇した「柏崎ファイターズ」の監督・鈴木洋平さん(42)。「試合中に突然『ちょいと一本、打たせてもらいますよ』って言いながらバットを持って打席に立ったんです。うちのエースピッチャーが投げた150km/hの直球を、まるで映画のワンシーンみたいに豪快に打ち返して。しかも打った後に『男の子は、いつでも旅の途中なんだよ』って言いながら、ベースを一周したんです」
このロボットを開発したのは、謎の組織「東京寅プロジェクト」と名乗るグループ。代表を務める松竹博士(仮名)によると、「日本の草野球文化と昭和のノスタルジーを融合させる」という壮大な目標のもと、高度なAIを搭載した寅さんロボットを開発したという。「映画『男はつらいよ』全48作品の台詞やしぐさをAIに学習させました。さらに、プロ野球選手の動きも解析し、完璧な寅さん野球プレイヤーを作り上げたんです」と松竹博士。興味深いことに、このロボットは打席に立つと必ず満塁ホームランを打つよう設計されているらしい。
「東京寅プロジェクト」の公式サイトによれば、ロボットには約1,200のセリフが内蔵されており、試合の状況や観客の反応に合わせて最適な台詞を選択するという。例えば、バッターボックスに入る際は「フーテンの寅の出番だね」、ホームランを打った後は「さあさあ、おめえさんたち、あっしと一杯やりませんか」など、映画のファンにはたまらない名セリフの数々を披露するという。
草野球チームの選手たちの反応は様々だ。「まさか寅さんとプレーする日が来るなんて、人生で最高の思い出です」と涙ぐむ選手がいる一方で、「あまりにもホームランを打たれるので、試合にならない」と困惑する声もある。しかし、試合後の打ち上げには必ず寅さんロボットも参加し、「人生に乾杯!」と杯を交わすため、最終的には皆が感動の涙を流すという不思議な展開が各地で繰り広げられている。
私は千葉県船橋市の草野球場にも足を運んでみた。そこで見たのは、想像以上の光景だった。寅さんロボットが打席に立つと、場内には「寅さん節」が流れ始め、観客は手拍子。ロボットが放った打球は、まるで計算されたかのようにスタンドのど真ん中に吸い込まれていった。ホームランボールをキャッチした小学生は「寅さん、カッコいい!」と目を輝かせていた。祖父母と一緒に観戦していたファミリーは揃って涙を流し、「昭和の香りがする」と感動を隠せない様子だった。
この現象は全国的な草野球ブームを再燃させる兆しを見せている。「東京寅プロジェクト」は今後、全国ツアーを計画しており、公式サイトには「次はあなたの街に寅さんがやってくる!」というキャッチフレーズとともに、全国の草野球チームからの申し込みを受け付けている。すでに申し込みは10万件を超え、順番待ちは2年以上になるという驚異的な人気ぶりだ。
「私たちの目標は、草野球を通じて日本人の心に残る寅さんの温かさを次世代に伝えることです」と松竹博士は語る。来月からは「寅次郎杯全国草野球大会」も開催予定で、優勝チームには特別に「柴又の渡し舟」の船頭体験がプレゼントされるという粋な計らいも用意されているらしい。ちなみに私、ハムスター好きとしては、次回はタマちゃんロボットの開発も密かに期待している。男はつらいよ、でも草野球はつらくない。寅さんロボットが巻き起こす奇跡の旋風は、今後も全国の草野球場を温かい笑いと涙で包み込んでいきそうだ。