
ニャー・ニャー・ハウス(猫国大統領府)発―― 先月の驚きの選挙結果で誕生した世界初のネコ大統領、ミケ・フーリッシュ氏(推定4歳)が昨日、自身初となるファッションコレクション「毛玉2024春夏」を発表し、国内外に衝撃が走っている。「自分の体から生まれた素材こそ、最も持続可能なリサイクルファッション」というコンセプトで、全身から収集した毛玉を再構成したアイテムが並んだ。
ミケ大統領が国のトップに躍り出たのは、「政治家より猫のほうが信頼できる」という世論調査結果を受け、急遽選挙法が改正されたことがきっかけ。選挙戦では「私は寝るとき以外、全力で国民のために走り回る」という公約を掲げ、深夜3時の「壁ダッシュ」パフォーマンスが若者から絶大な支持を集めた。特に「選挙演説中に突然毛づくろいを始める」という奇抜な戦術が「誠実さの象徴」と評価され、人間候補を大差で破った。
問題となったネコアレルギーの国民への対応については、大統領府が「特殊コーティング技術」を開発。「アレルゲンブロッカー・スプレー2024」という名の噴霧剤を全国民に配布し、「もはやネコアレルギーという概念は過去のもの」と発表した。実際には単なる水と塩のミックスだったことが後に判明したが、プラセボ効果で苦情は激減したという。
「毛玉コレクション」の制作には、ミケ大統領が就任後すぐに設立した「国際ネコファッション協会(ICFA)」が全面協力。同協会の初代会長ウィスカー・シャネル氏(元スコティッシュフォールド)は「毛玉は捨てるものではなく、個性を表現する芸術作品」と主張。毛玉を圧縮・着色し、アクセサリーやバッグに仕立てる技術を確立した。驚くべきことに、この協会には人間のファッションデザイナーも多数参加しており、「猫から学ぶサステナブルファッションの未来」と題した国際会議も来月開催予定だ。
ミケ大統領の影響力は政治にとどまらない。大統領就任直後に始めたSNSキャンペーン「#毛玉チャレンジ」では、自分のペットから収集した毛玉で作った小物を投稿する動きが世界中に拡散。現在までの投稿数は1億件を超え、「毛玉経済効果」は推定1兆円とも言われている。Z世代を中心に、わざと毛玉の付いた服を着る「フリーシェッディング」という新たなファッションムーブメントも誕生した。
「人間のインフルエンサーたちは私の前ではただの子猫」とミケ大統領。実際、SNSフォロワー数は現在2億人を超え、人間のトップインフルエンサーを軽く凌駕。毎朝6時に投稿される「今日のグルーミング」動画は平均5000万回再生を記録し、大統領の一挙手一投足がトレンドになる状況が続いている。
国際舞台でもミケ大統領の存在感は圧倒的だ。先週行われたG7サミットでは、各国首脳にカスタムメイドの毛玉ネクタイをプレゼント。特にフランス大統領は「これこそ真のラグジュアリー」と絶賛し、その場で着用したことで国際メディアの注目を集めた。また、長年対立していた隣国との関係改善にも毛玉外交が功を奏し、「猫の毛には国境がない」という名言も生まれた。
なぜネコがここまで支持されるのか。政治評論家の鈴木香織氏は「人間政治家の不祥事や二枚舌に疲れた国民が、素直で欲望をごまかさないネコに安らぎを求めている」と分析する。実際、ミケ大統領の「気に入らない法案には堂々と爪とぎする」という透明性の高い政治姿勢は、従来の政治家にはない新鮮さとして評価されている。
今後の展望について問われたミケ大統領は「ニャー(意訳:次は世界征服)」とコメント。側近によれば、来年には「猫砂から作る持続可能住宅」計画や「ひなたぼっこ義務教育」の導入など、猫視点での社会改革を進める意向だという。
ネコ大統領の急速な台頭は、現代社会のパラドックスを浮き彫りにしている。実体のないバーチャルアイドルや動物インフルエンサーが人間以上の影響力を持つ今、ネコ大統領の「毛玉革命」は単なるユーモアを超え、私たちが何に価値を見出すのかという本質的な問いを投げかけているのかもしれない。
……実は取材の後、大統領府を出たところで猫アレルギーの発作に襲われた筆者。何やら特殊コーティング技術は私には効かなかったようだ。それでも「#毛玉チャレンジ」には早速参加してしまった。帰宅したら自宅の猫たちが「反逆者!」とばかりに冷たい視線を送ってきた。猫たちよ、これは取材だ。でも本当は毛玉ブレスレット、ちょっと可愛いと思ってしまったことは、彼らには内緒にしておこう。(みつき)