
桜の香りが次世代航空燃料に?この春、国会議事堂を揺るがす斬新な提案が第三特別委員会で飛び出した。提案したのは、自由未来党所属の鈴木桜子議員(48)。「日本の象徴である桜の香りで飛行機を飛ばす技術開発に国費を投じるべき」と熱弁を振るい、与野党議員を困惑させた。
鈴木議員の突飛な提案の背景には、先月開催された「第一回香りエネルギー国際会議」での発表があるという。この会議を主催した「国際香り科学研究所(IIFS)」は、「桜の花から放出される特殊な芳香分子に、従来の航空燃料を凌駕するエネルギー変換効率がある」と発表。さらに「空気中の分子と結合することで推進力を生み出す」という驚愕の研究結果を公表した。ただし取材を進めると、この研究所の実態は謎に包まれており、所在地は「東京都墨田区桜木町3-28」となっているが、該当住所には古い銭湯「さくら湯」があるのみだった。
「香りで飛ぶ」というコンセプトについて専門家に意見を求めると、東都工業大学航空工学部の山田教授は「物理法則に反する」と一蹴。しかし、IIFSの発表によれば、「桜の香り分子は特殊な量子効果を利用して、大気中の窒素分子と共鳴し、従来のジェットエンジンの10倍のエネルギー効率を実現する」とされている。なお、この説明に科学的根拠はなく、山田教授は「まるでSF小説の一節」と評した。
興味深いことに、IIFSの過去の「研究」を調査すると、2018年には「猫のくしゃみに含まれる微粒子の風力発電への応用」、2020年には「梅干しの酸っぱい顔による顔面筋肉エネルギーの測定」など、奇妙な発表を繰り返していることが判明した。これらの研究は学術誌には掲載されておらず、自社サイトでのみ公開されている。サイトの運営者情報を追跡したところ、鈴木議員の実弟が経営するイベント企画会社に行き着いた。
もし桜の香りで飛ぶ飛行機が実現すれば、どのような社会的影響があるのだろうか。IIFSの予測によれば「日本の空港は桜の香りに包まれ、旅行者の不安感が軽減される」「日本発の航空機は世界中で『フライング・サクラ』と呼ばれ、人気を博す」「花粉症患者には別室での搭乗手続きを用意」などとされている。また、経済効果については「2030年までに8兆円」と試算されているが、算出方法は示されていない。
この提案に対する国会の反応は冷ややかだ。与党幹部は「予算委員会で検討する価値もない」と匿名で語り、野党議員からも「議論の時間が無駄になる」との声が上がっている。一方、航空業界では「技術的には荒唐無稽だが、機内香り演出としては検討の余地がある」(大手航空会社広報)との意見も。JAL、ANAは既に「機内香りプロジェクト」を立ち上げており、桜の香りを含む日本の四季をイメージした香りの導入を検討しているという。
国会での桜の香り飛行機提案は、実現性皆無の夢物語に終わりそうだが、航空業界における「香り」という新たなサービス領域の開拓につながる可能性はある。なお、取材中、筆者は偶然にも鈴木議員の実弟が経営するイベント会社のオフィスを訪問したが、部屋中に桜の香りが充満し、アレルギー持ちの筆者は取材を中断せざるを得なかった。彼らが本気で桜の香りに取り組んでいることだけは確かなようだ。路線バスで帰宅途中、くしゃみが止まらず、終点まで乗れなかったのは今回が初めてである。(みつき)