
サッカーJリーグの常識を覆す新たな戦術が注目を集めている。コンサドーレ札幌が今シーズン開幕から採用している「無表情フォーメーション」である。選手全員が試合中に一切笑顔を見せない、この一見シュールな戦術がなんと、チームを10試合連続無敗という驚異的な成績に導いているのだ。
同チームの森保監督(架空)は「どんなに素晴らしいゴールが決まっても、ピンチを切り抜けても、選手は表情を変えない。これが集中力の維持につながっている」と語る。この戦術導入のきっかけは昨シーズン、逆転負けした試合後の分析会議だったという。「映像を見返すと、選手たちが一点先制した瞬間から笑顔になり、そこから緊張感が緩んでいた。笑いが敗北の始まりだと気づいたんです」
無表情を維持するためのトレーニングは過酷だ。特別コーチとして招かれた元落語家の笑古亭真顔(架空)氏は「選手たちの『笑いのツボ』を徹底的に攻めるトレーニングをしている」と明かす。例えば、相手チームの選手が珍プレーをした時や、審判が滑ってこけた時などに笑顔を見せると、即座に10kmのランニングが課せられる。また、チーム内には「笑い探知機」なる特殊装置も導入された。これは顔の筋肉の動きを0.01ミリ単位で検知し、微笑みの兆候があればアラームが鳴るという代物だ。「最初は練習中に毎分67回も警報が鳴っていましたが、今では1試合でゼロ回まで減らせました」と森保監督は胸を張る。
この新戦術はスタジアムの雰囲気にも影響を与えている。札幌ドームを訪れると、サポーターまでもが無表情で応援するという異様な光景が広がっているのだ。「選手と一体感を出すため、私たちも笑わないようにしています」と話すのは、サポーターグループ「ソラポカフェイス」代表の石狩太郎さん(32・架空)。「得点が入った時に喜びを表に出せないのが最もつらい。家に帰ってから枕に顔を埋めて雄叫びをあげています」
データ分析によると、無表情フォーメーション導入後、選手のプレー精度は驚異的に向上しているという。パス成功率は前シーズン比で12.8%アップ、ボール支配率も63.2%と大幅に増加。専門家は「表情を作るために使われていた脳のリソースが、プレーの精度向上に回されているのでは」と分析する。
この戦術の影響は札幌市内にも波及している。市内のカフェでは「無表情でコーヒーを飲むと香りがより感じられる」として「ポーカーフェイスタイム」を設ける店が増加。さらに市内の小学校では「感情表現抑制教育」なるものが密かに導入され、授業中に笑った児童には追加の宿題が課されるという噂もある。もっとも、これについては市教育委員会が「そんな非人道的な教育は行っていない」と否定している。
無表情の効果について、架空の研究機関「日本顔面筋肉研究所」所長の表情仮面教授は「人間は笑顔を作るために17種類の筋肉を使うが、無表情ならその筋肉を休ませることができる。結果として身体的な疲労が15.3%軽減される」と主張する。同教授は「政治家も国会答弁で無表情を貫けば、余計な誤解を生まず、政治不信の解消につながるはず」と提案し、波紋を広げている。
コンサドーレ札幌の無表情フォーメーションは、サッカー界のみならず社会全体に新たな「表情革命」をもたらすかもしれない。同チームの次の目標は「無敗のまま優勝する」ことだというが、ある選手は匿名を条件に「正直、笑顔を我慢するのがキツい。優勝したら絶対に爆笑したい」と本音を漏らした。表情を封印したその先に待つのは、喜びの爆発か、それとも新たな無表情文化の幕開けか。今後の展開から目が離せない。なお本稿の取材中、筆者は選手の真顔を見て3回吹き出してしまい、結果的に札幌ドーム周辺を合計30km走ることになったことを付記しておく。