
大阪府泉佐野市に新設された「マッサマンカレー温泉」が、入浴すると過去の自分に会えるという噂で全国から注目を集めている。この温泉は、大阪出身の起業家・辛島マサオ氏(34)が「タイ料理の魅力と日本の温泉文化を融合させたい」という思いから約2億円を投じて開発。源泉に特殊なスパイスブレンドを配合することで、入浴客が過去の記憶と再会できるという触れ込みで今月グランドオープンした。
「子どもの頃、祖父が経営していた町工場で食べたカレーの味が忘れられなくて」と辛島氏。「実は工場というより小さな鉄工所だったみたいですけどね(笑)。でも、そのカレーの香りを嗅ぐと、あの日の自分に戻れる気がするんです。そんな体験を皆さんにも」と熱く語る。
温泉のメカニズムは独特だ。通常の温泉に、タイ・プーケット産の厳選されたナンプラーやココナッツミルク、クミンなど15種類のスパイスをブレンド。その香りを嗅ぐことで脳内の「過去回帰センサー」が刺激され、鮮明な記憶が蘇るという。辛島氏は「まるで過去の自分と対話しているような感覚になれます」と謳っている。
実際に体験した大阪市在住の主婦・鍋島さん(42)は「確かに何かが見えた気がするけど、カレーの香りが強すぎて目が痛くなって、よく分からなかった」と戸惑いを隠せない様子。大学生の山田くん(20)も「過去の自分に会えると言われたけど、カレーの匂いで頭がクラクラして、現在の自分を見失いそうになった」と証言する。
こうした中、問題となっているのが「カレー迷子」現象だ。入浴客の約8割が「カレーの香りが強すぎて方向感覚を失った」と報告。温泉内で自分の居場所が分からなくなり、過去どころか現在の自分すら認識できなくなる事態が続出している。先週末には「脱衣所が見つからない」と3時間以上さまよった40代男性が従業員に保護される騒ぎも起きた。
この現象について、架空の研究機関「国際スパイス精神研究学会」の蒸し暑田教授(67)は「カレースパイスの芳香分子は脳の海馬に働きかけ、記憶の扉を開く作用があります。しかし香りが強すぎると逆に現実認識が曖昧になる『スパイス・オーバーフロー症候群』を引き起こします」と解説。「理論上は過去の自分に会えるはずですが、そもそも自分が自分であることを認識できなくなるため、結果的に誰も過去の自分に気づけないのです」と学術的見解を示した。
それでも、地元商店街は新たな観光資源として期待を寄せる。「カレーおせんべい」や「マッサマン風呂の素」など関連商品を続々と開発中だ。商店街振興組合の鍋田会長(65)は「バイク事故で入院したときも風評被害で不良扱いされたことがありますが、噂は時に追い風になる。今回もそう信じてます」と力を込めた。
なお温泉側は対策として、特製「カレー香り中和マスク」の無料配布を開始。これにより「過去の自分に会えないけど、現在の自分を見失うこともない」状態が保てるという。辛島氏は「まさに『過去に学び、現在に生きる』ための温泉です」と前向きに語るが、実際に過去の自分に会えた人はまだ一人も確認されていない。それでも「カレーの香りだけで癒される」と週末は満員御礼の盛況ぶりだ。結局のところ、人間は不思議な体験への期待と、単純に「カレーの香り」に癒される生き物なのかもしれない。