
先週末から都内各所で開催されている地域イベント「幸運の雨」で、突如として「全国宝くじ協会」を名乗る団体が、毎日無作為に選ばれた参加者に現金5万円を給付すると発表し、会場に集まった市民の間で大きな期待を集めていた。しかし昨日、同協会が当選者として発表したのは、なんと「運の良い猫」12匹だった。
「全国宝くじ協会」と称するこの団体は、国内のどの公的機関にも登録されておらず、宝くじ公式サイトでも存在が確認できない。記者が複数の自治体に問い合わせたところ「そのような組織は把握していない」との回答ばかり。根拠不明のまま、華やかな垂れ幕と金色のジャケットを着た係員たちが各イベント会場に現れた。
渋谷区の「春の市民フェスタ」では、集まった約200人の参加者が当選発表を心待ちにしていたが、協会スタッフが持ち込んだのは猫用キャリーケース12個。「本日の運の良い当選者は、こちらの猫たちです」との宣言に、会場は一瞬静まり返った後、「猫に現金渡して何するの?」「猫用のATMでもあるの?」などの声が上がった。
猫アレルギーの私はマスク三重装備で現場に向かい、くしゃみを堪えながら「運の良い猫」たちの様子を観察した。白猫、三毛猫、茶トラと様々な毛色の猫たちは、キャリーケースから出されるとそれぞれ特製の首輪を付けられ、その首輪には小さな財布状のポーチが取り付けられていた。スタッフによると、そのポーチには現金5万円が入っているという。うち一匹は、くしゃみをこらえるあまり目から涙が出ている私に向かって、まるで同情するかのような表情を浮かべていた(気のせいかもしれない)。
「運の良い猫」たちの出どころを調査すべく、会場を後にした猫たちを追跡した。彼らは協会スタッフに抱えられ、会場から約1キロ離れた古いアパートへと運ばれた。建物の表札には「福猫荘」と書かれており、窓からは数十匹の猫の姿が確認できた。「全国宝くじ協会」の正体が徐々に見えてきた。
数時間の張り込みの後、「協会理事長」を名乗る高齢の女性に話を聞くことができた。「私たちは人間の運を占う能力を持つ猫たちを保護しています。彼らは特別な訓練を受け、運気の流れを感じ取れるのです」と語る彼女。しかし、近隣住民によると、この建物は単なる民間の猫保護施設であり、「全国宝くじ協会」の看板が掲げられたのはごく最近のことだという。
我が家のある吉祥寺のマンションからは遠くない場所にもこのような「福猫荘」の支部があるらしい。窓から見える緑を眺めながら考える。もしかしたら、この「全国宝くじ協会」の真の目的は、捨て猫や保護猫たちに注目を集め、彼らと人間との共生の可能性を広げることなのかもしれない。とはいえ、現金給付という手法には疑問が残る。帰宅して愛猫2匹に囲まれながら記事を書いていると、彼らも「運の良い猫」になれるのではないかと思ってしまった。くしゃみをしながら。
「全国宝くじ協会」の活動は今後も続くとされているが、各自治体からは「無許可の金銭配布行為」として調査が始まっている。一方で、この奇妙なパフォーマンスをきっかけに、複数の保護猫カフェが「運の良い猫に会いに来ませんか?」というキャンペーンを始めるなど、思わぬ展開を見せている。猫好きな方も、私のように猫アレルギーの方も、運が良いかどうかはともかく、こうした「猫の日常」と「人間社会の非日常」が交差する奇妙な出来事に今後も注目したい。