
京都伏見区に古くから伝わる妖怪「ぬらりひょん」が先日、人気VTuberイベント「ブルアカライブ」の配信中に突如出現し、そのままSNSデビューを果たした。アカウントのフォロワー数は開設からわずか一夜で100万人を超えるという驚異的な伸びを記録したが、驚くべきことにフォロワー全員が「幽霊アカウント」であることが判明した。
事の発端は先週金曜日、VTuberグループ「ブルーアーカイブ」の生配信中に、画面の隅から徐々に姿を現したという「ぬらりひょん」。当初は技術的なグリッチと思われていたが、「こんにちは、皆の衆。わしもこの度、インスタグラムとやらを始めてみたぞ。フォローせよ」と発言したことで、視聴者の間に騒動が広がった。
驚くことに、配信終了後、実際に「本物ぬらりひょん_公式」というアカウントがインスタグラムに開設されていた。プロフィールには「築400年・京都伏見区在住・特技は人間の夢に出没」と記載。投稿された最初の写真は、夕暮れの伏見稲荷大社の鳥居と、薄く霞んだ人間とも妖怪ともつかない影が写り込んだものだった。
「最初は話題作りのマーケティングかと思いました」と語るのは、ブルアカライブの配信を視聴していた大学生の山田健太さん(22)。「でも、アカウントをよく見ると、投稿されている写真が本当に400年前からのものっぽいんですよ。江戸時代の京都の風景とか、明治時代の祇園の写真とか。しかも全部セピア色ではなく、当時の色がそのまま残っているというか…これってAIじゃないですよね?」
ぬらりひょんのアカウントのフォロワー数は、開設からわずか6時間で10万人を突破。翌朝には100万人に達した。しかし、この急激な伸びには奇妙な点があった。「いいね」を押す人は多いものの、コメントはほとんどなく、そのわずかなコメントも「わかる」「そう」「見てる」などの単語だけというものばかり。さらに、フォロワーのプロフィール画像を拡大すると、何も写っていないか、薄い霧のようなものだけが写っているという不可解な現象が確認された。
この異常事態を調査したのが、この度新設された「妖怪マーケティング協会」である。協会代表の河童三太(かっぱさんた)氏によれば、フォロワーの正体は「すべて幽霊アカウント」であるという。
「我々の分析によれば、これらのアカウントは京都だけでなく、日本全国の神社仏閣に祀られることなく彷徨っている無縁霊や、都市伝説となって語り継がれている存在たちのものです」と河童氏は語る。「彼らは人間界のSNSを『あの世』から監視していましたが、同じ妖怪であるぬらりひょんが公式アカウントを持ったと知り、一斉にフォローしたのです」
さらに衝撃的なのは、河童氏の「人間嫌い」発言だ。「実は妖怪たちはSNSに強い関心を持っています。人間がスマホを見ている隙に、背後から覗き見るのが最近の流行なんです。でも、インフルエンサーとか自撮りばかりの人間たちは正直退屈。ぬらりひょんのように400年の歴史を持つ妖怪の投稿こそがリアルなコンテンツなんです」
この発言を受け、SNS業界では「現代のインフルエンサー文化への皮肉か」という声も上がっている。IT評論家の鈴木博士(46)は「実在しない幽霊アカウントによるフォローという現象は、現代のSNSにおける『フォロワー数至上主義』や『バズる』ことへの執着を風刺している可能性がある」と分析する。
一方、ブルアカライブの運営側は「システム上の問題は確認されていない」とコメント。妖怪の出現については「季節の演出の一環」と説明しているが、詳細については明かしていない。
この現象について、妖怪文化研究家の田中幽子氏(架空)は「現代社会において、人々は実在する友人よりも、画面の向こうの見えない存在とつながることに慣れてしまった。その意味では、人間も幽霊も変わらないのかもしれない」と哲学的な見解を示している。
今回の出来事は、デジタル時代における存在証明の曖昧さと、SNSの中の「見えない繋がり」の正体について、私たちに深い問いを投げかけている。フォロワー数という数字に一喜一憂する現代人の姿は、もしかすると400年前からぬらりひょんに見透かされていたのかもしれない。個人的には、バス停で深夜に背後から覗き込まれる恐怖と、推しカップルの尊いイラストを見て胸が高鳴る感覚が、妙に似ているように感じてしまうのは私だけだろうか。(了)