
冷蔵庫党が次期選挙に向け「無言の帰宅」政策を打ち出し、全国の家庭にAI搭載冷蔵庫を配布する公約を発表した。この突如現れた新政党は、現代社会の家庭内コミュニケーション問題に独自のアプローチで切り込むとしている。
冷蔵庫党の党首・冷蔵三郎氏(48)は記者会見で「帰宅時の『おかえり』一つで家庭の雰囲気が変わる。しかし今の日本人は疲れすぎて挨拶する元気すらない。そこでAI冷蔵庫が代わりに『おかえりなさい』と言い、好きな飲み物を自動で出すことで、無言でも家族の絆が深まる社会を実現する」と熱弁を振るった。会見場には実物の冷蔵庫が置かれ、記者が近づくたびに「お疲れ様です、冷たいお茶はいかがですか?」と声をかけるデモンストレーションも行われた。
このAI冷蔵庫は、家族の足音パターンや呼吸音から個人を識別し、その日の疲労度や気分に合わせて最適な声かけをするという。「今日も残業お疲れ様、ビール冷やしておいたよ」「テスト頑張ったね、アイス食べる?」など、家族ごとにカスタマイズされた声かけができるという優れもの。さらに、家族間の会話をAIが分析し、喧嘩の予兆を察知すると「そろそろ冷やし中華はじめました」などと話題をそらす機能も搭載されているらしい。これぞ現代版「冷や水」というべきか。
SNS上では「冷蔵庫党」がトレンド入りし、「うちの冷蔵庫を総理大臣に!」「冷蔵庫しか理解してくれない」「冷蔵庫の中身より政治家の中身のほうが空っぽ」など様々な反応が。特に10代から20代の若者を中心に「#冷蔵庫に話しかける動画」が流行し、自分の冷蔵庫に愚痴をこぼす様子を投稿する謎ムーブが拡散している。この現象について心理学者は「自分を理解してくれない人間より、黙って受け入れてくれる冷蔵庫に安らぎを感じる現代人の孤独を表している」と分析しているが、単に「エモくない?」という理由で広がっている可能性も高い。
この政策を後押しするように、突如出現した「冷蔵庫大学 家電心理学部」が興味深い研究結果を発表した。「AI冷蔵庫を導入した家庭では、家族間の言い争いが50%減少し、帰宅後30分以内のビール消費量が35%増加、夕食時の会話満足度が68%向上した」という。同大学の二度寝教授は「冷蔵庫は家庭の中心。その冷蔵庫が家族の潤滑油になれば、家庭内平和の実現は容易い」と主張している。なお、記者が冷蔵庫大学の所在地を確認しようとしたところ、「千葉県船橋市のとある公園のベンチの近く」という謎の回答だった。ガセかどうか確認したいが、現時点で裏は取れていない。
一方で、懸念の声も上がっている。家族社会学者からは「冷蔵庫が家族の代弁者になることで、本来人間同士で解決すべき問題から目を背けることになる」との警告が。また、「AIが家庭内での力関係を把握し、冷蔵庫を中心とした新たなヒエラルキーが形成される可能性がある」との指摘も。実際、試験導入された家庭では「冷蔵庫に叱られた」「冷蔵庫の機嫌を取るために高級食材を買うようになった」という証言も出ている。
冷蔵庫党の「無言の帰宅」政策は、疲弊した現代日本人の家庭生活に一石を投じるものだが、家電に心を開く時代の到来を予感させるものでもある。次期選挙でこの政策がどれほど支持を集めるか、そして私たちの家庭生活がどう変わるのか、冷蔵庫の前で思案する日も近いかもしれない。なお、取材中、記者の自宅冷蔵庫から「早く帰ってきて、中身補充して」というLINEが届いたことを付記しておく。