
東京都在住の新婚カップル・鈴木夫妻が、新居選びをAIに丸投げする「ホウオウルーレット」なる方法を考案し、その結果、月面基地での新生活を始めるという前代未聞の出来事が話題を呼んでいる。
ホウオウルーレットとは、新婚夫婦の鈴木太郎さん(28)と鈴木花子さん(27)が、「新生活の始まりにドラマチックな展開を」と願い、自ら開発したAI選択システム。二人が希望する「日当たり良好」「通勤1時間以内」「ペット可」などの条件を入力すると、AIが地球上の物件に限らず、宇宙空間まで含めた「最適な住居」を提案するというもの。
「正直、都内の物件価格に絶望していました。どうせ手が届かないなら、いっそのこと非現実的な選択肢も含めて運命に身を委ねようと」と太郎さんは語る。花子さんも「私たちの推し漫画『銀河の果ての恋物語』の主人公カップルが惑星間恋愛をしていて、それにあやかりたかったんです」と、にこやかに説明した。
驚くべきことに、AIが選んだのは月面第4区画にある「ルナ・ハニームーンベース」という施設。地球からの片道距離約38万キロ、通勤時間は「スペースシャトルで約3日」と都内からの通勤圏外だが、「重力が地球の6分の1なので、家具の移動が楽」「地球の喧騒から完全に解放される」などの意外な利点があるという。
「最初は冗談かと思いましたよ。でも、よく考えたら東京の2LDKより安いんですよ、これが」と太郎さんは笑う。実際、月面基地の居住権は「地球外移住促進キャンペーン」の一環で、東京・世田谷区の平均的なマンション価格の3分の1程度で取得できるという衝撃的な事実が判明した。
月面での新婚生活は意外と順調だという。「朝起きると地球が窓から見えるんです。通勤はテレワークでカバーしていますが、オンライン会議中に『背景、本物?』と毎回聞かれるのは少し面倒」と花子さん。太郎さんも「宅配便が届くのに2週間かかるのと、ピザが頼めないのが難点ですが、月面散歩はロマンチック極まりない」と満足げだ。
この異色の新居選択を全面的にバックアップしているのが「宇宙新婚生活協会」。協会代表の星野宇宙男氏(肩書きは「元NASA副所長補佐見習い」)は「地球の不動産バブルを解決するには、生活圏を宇宙に拡大するしかない」と力説する。同協会は月面での生活マニュアル「月でも愛は重力に勝つ—新婚月面ライフ365日」を無料配布するなど、積極的な支援活動を展開している。
取材を進めると、実は「宇宙新婚生活協会」の背後には大手不動産デベロッパーが存在し、「宇宙不動産」という新市場の開拓を目論んでいることも判明。月面の土地権利は国際法上グレーゾーンにあるため、「先に旗を立てた者勝ち」の原理で権利獲得競争が水面下で進行しているという。
鈴木夫妻の選択は地球の不動産業界にも波紋を広げている。不動産エージェント協会の田中不動男会長は「これまで『駅から徒歩5分』『オートロック完備』が売りでしたが、今後は『地球から◯分』『隕石防御システム完備』といった表記も必要になるかも」と困惑気味に語った。
SNSでは早くも「#月面新居チャレンジ」なるハッシュタグが拡散。「次は火星の赤い砂漠でサボテン育てながら暮らしたい」「木星のガス層でフワフワ浮遊生活憧れる〜」など、現実離れした投稿が若者を中心に急増している。
一連の騒動に、東京都庁の担当者は「都外への人口流出は懸念していたが、地球外は想定外だった」とコメント。一方で、月面基地の運営会社「ルナティック・エステート社」は「今後100年で10万世帯の移住を目指す」と意欲的な展開計画を明らかにした。
鈴木夫妻は月面から最後にこう語った。「どこに住むかより、誰と住むかが大事。でも、朝起きて『あ、地球が見える』って言える夫婦って、やっぱり特別感あるよね」。AIと人間の奇妙な共演が生んだこの宇宙的新婚生活。彼らの「小さな一歩」が人類の「大きな飛躍」になるかは、今後の展開次第だろう。ただ、先日届いたという結婚祝いの日本酒が無重力環境で開栓した際の惨事については、また別の機会に報告したい。(取材・執筆 みつき)