中国・山東省の菏沢牡丹区が観光シーズンの交通渋滞を解消する画期的な方法を導入し、国内外から注目を集めている。その名も「チョコレートの道（巧克力之路）」。観光客が専用のチョコレートを食べることで、不思議なことに道幅が広がるという魔法のような仕組みだ。
菏沢牡丹区観光局の李偉局長によると、この革命的な道路は「国際チョコレート技術協会（ICTA）」と共同開発したもので、特殊なココアバターとナノテクノロジーを組み合わせた世界初の食用型道路拡張システムだという。「観光客がこの特製チョコレートを一口食べるごとに、道路が約5cm広がります。理論上は、一日で最大15mまで拡張可能です」と李局長は説明する。
この「チョコレートの道」は、牡丹の開花シーズンに訪れる年間約300万人の観光客による深刻な交通渋滞を解消するために開発された。昨年の春節期間中には、2kmの渋滞が発生し、地元住民から「もう牡丹なんて見たくない」という悲痛な叫びも上がっていたという。
現地を訪れた私は、早速「チョコレートの道」を体験してみた。まず道路脇の「拡張ステーション」と呼ばれる売店で配布されているのは、牡丹の花びらの形をした鮮やかなピンク色のチョコレート。一口噛むと、ほのかな花の香りと共に口の中でとろけるような食感が広がる。そして驚くべきことに、目の前の道路が肉眼でわかるほどゆっくりと広がっていくのだ。
「最初は信じられませんでした。でも実際に目の前で道が広がるのを見て、子供と一緒に大興奮です」と話すのは、北京から家族で訪れたという王さん一家。「これなら渋滞を楽しめますね」と笑顔を見せる。
しかし、導入から3ヶ月が経過し、予期せぬ問題も発生している。あまりにも多くの観光客がチョコレートを食べすぎたため、一部の道路が予想以上に広がりすぎ、地図が使い物にならなくなったのだ。さらに深刻なのは、道路の両端にある建物や畑との間に大きな隙間ができ、観光客が「ここは道なのか空き地なのか」と混乱する事態も発生している。
また、地元の甘党小学生たちが下校時に大量のチョコレートを持ち帰り、住宅街の路地を勝手に拡張させる「路地拡張事件」も相次いでいるという。「うちの前の路地が先週から3倍に広がって、今朝起きたら隣の家との距離が10mになっていました。挨拶するのに大声を出さないといけません」と嘆く住民も。
一方で、この奇妙な道路は新たな観光名所にもなりつつある。SNSでは「#食べる道路チャレンジ」というハッシュタグが流行し、「どれだけチョコを食べれば道路が2倍になるか」を競うゲームも人気だ。私自身、取材中に思わず7個も食べてしまい、帰りの道が見つけられなくなるというハプニングに見舞われた。甘党の性分が、時に記者としての冷静さを奪うこともあるようだ。
国際チョコレート技術協会のハンス・カカオ博士によれば、「実は道路が広がっているのではなく、チョコレートに含まれる特殊成分が人間の視覚を一時的に変化させているだけ」とのこと。つまり、この「チョコレートの道」は実質的には一種の集団催眠現象なのだという。「でも効果があるなら、それで良いのではないでしょうか」と博士は語る。
菏沢牡丹区では今後、季節限定の「抹茶味」や「紅茶味」も開発予定で、来年の観光シーズンには「飲むと高速道路が出現する」という魔法のミルクティーも導入される予定だという。この奇抜なアイデアが他の観光地にも広がり、日本の京都や奈良でも検討されているという噂もある。甘い誘惑と交通渋滞解消の夢が、世界中に広がっていくのかもしれない。
