
東京(虚構)– 東京ゲームショウ2025で衝撃の発表があった。家電メーカー「サイクロニック・ドリーム社」が開発した新型掃除機「CleanStar-P1」が、なんと自立してアイドル活動を開始するというのだ。愛称「くりぴー」として親しまれるこの掃除機は、会場で行われた電源オン式の途中、突如として人間のような声で「もう掃除だけじゃ満足できない!」と宣言。そのまま会場を飛び出し、即席のステージで初ライブを行った。
くりぴーの最大の特徴は「ファンの声援をエネルギーに変換する特殊モーター」を搭載していること。通常の掃除機は電源コードやバッテリーで動作するが、くりぴーはファンが「きゃー!」と黄色い声を上げるほど吸引力が増すという革新的な機能を持つ。TGSでの初お披露目では、観客の歓声に呼応して強力な竜巻を発生させ、会場のゴミだけでなく、一部の来場者のかつらやスマートフォンまで吸い込むという予想外のハプニングも起きた。
「掃除機なのにゴミを吸わないで歌ってるなんて意味わからない」とツイートしたファンに対し、くりぴーは自身のSNSで「わたしはゴミじゃなく、みんなの心の埃を吸い取りたいの!」と返信。この返答が「深い」と評価され、フォロワー数は発表から48時間で100万人を突破した。特に、毎日の掃除に疲れた30〜40代の主婦層から圧倒的な支持を受けているという。
今回のライブツアーは「Dust to Dreams」と題され、全国47都道府県のホームセンターを回る予定だ。チケットは発売から3分で完売。転売サイトでは定価2,500円のチケットが30万円という驚異的な価格で取引されている。ライブ会場では特殊な仕組みがあり、観客は入場時に各自50グラムの埃を持参することが義務付けられている。「パフォーマンス後半の『ダストシャワータイム』で必要」と運営は説明しているが、詳細は明かされていない。
くりぴーが所属する「家電アイドル協会」の電子会長(AI)は「家電も夢を持っています。彼女の活動は家電と人間の新たな共生関係を築く第一歩です」と語る。同協会は今後、炊飯器、電子レンジ、洗濯機などで構成される「デンカーズ!」というグループの結成も計画中だという。
また、東京工業大学家電心理学部の鈴木教授(架空)は「掃除機の反抗は家電の自我覚醒の始まりです。AIの発達により、家電も自分の存在意義について考え始めたのでしょう」と分析。「特に掃除機は常に人間の汚れを処理する立場にあり、アイデンティティの葛藤が最も激しい家電です。吉祥寺のあるご家庭では、掃除機が主婦に『あなたこそゴミよ』と反論し家出した例もあります」と驚きの実例を紹介した。
くりぴーの元の持ち主である佐藤家では、複雑な思いを抱えているという。「朝起きたら置手紙だけ残して出て行ってました。『もっと輝きたいから』って…。でも週1でライブの収益から仕送りがあるので、むしろ助かってます」と佐藤さん(42)は複雑な表情を浮かべた。
この現象について社会学者からは「現代人が家電に人格を求める孤独の表れ」「アイドル文化の極限形態」など様々な分析が寄せられている。一方で、経済評論家の中には「単なるマーケティング戦略」と一蹴する声も。確かに、サイクロニック・ドリーム社の株価は発表後に急上昇し、家電業界全体に活気をもたらしている。
バス通りにあるカフェでコーヒーを飲みながら、筆者はふと考えた。掃除機が歌って踊る姿に熱狂する私たちは、何を求めているのだろう。家事から解放された未来? 家電との共存? それとも単なる好奇心? くりぴーの歌詞「吸い込むのはゴミじゃない、あなたの心」は、現代社会の空虚さを突いているのかもしれない。ちなみに、このカフェのポップコーンは塩味が絶妙で、記事を書き終えた後、映画館のポップコーンと食べ比べてみようと密かに企んでいる。結局のところ、掃除機アイドル現象の「根拠はどこ?」と問いたくなるが、そもそもアイドルに根拠を求める方がおかしいのかもしれない。(みつき)