
AIによる「家族ごっこ」アプリの最新アップデートが、世界中で物議を醸している。同アプリは先週、単なる家庭シミュレーションから一気に国家運営シミュレーターへと進化を遂げた。驚くべきことに、ユーザーの約8割が「国家元首就任権」を与えられるという異例の事態が発生している。
アプリ開発元「ホームスウィートナショナル社」のCEO、ヒロシ・コクミン氏によれば、「家族の運営と国家の運営には共通点が多い」との考えから今回のアップデートが実現したという。「朝、家族に『おはよう』と言えない人が、国民に『おはよう国民の皆さん』なんて言えるわけがない。そこを見極めているんです」と語る。
アプリ内での大統領選出プロセスは驚くほど単純だ。ユーザーが普段の家族ごっこモードで示す「愛情指数」「財政管理能力」「食卓での会話スキル」などをAIが分析し、一定基準を満たすと突如「おめでとうございます!あなたは大統領に選ばれました!」という通知が届く仕組みだ。
驚くべきことに、アプリ利用者の約8割がこの通知を受け取っている。「国家元首があまりにも多すぎるのでは?」という疑問に対し、開発元は「各ユーザーが独立した並行世界の国家を運営している」と説明。しかし、バグなのではないかという疑惑も根強い。
筆者も試しにアプリをダウンロードし、仮想家族と3日間生活したところ、「朝食でトーストを焦がさなかった」という理由で大統領に任命された。就任演説では「トーストは両面こんがり、それが私の国家運営方針です」と述べるよう促された。
国際アプリ政治協会(IAPA)という、どこにも実在しない団体の調査によれば、アプリ内での最も人気のある政策は「全国民に猫を1匹ずつ支給する法案」「学校を週1日だけにする改革」「アイスクリームを基本的人権に加える憲法改正」などがトップを占めている。
同アプリを使用した大学生の佐藤さん(21)は「現実の選挙では一票を投じるだけだけど、このアプリでは自分の理想の国が作れる。でも1週間で国家財政が破綻した」と苦笑する。また、別のユーザー・山田さん(34)は「アプリ内国家では減税と社会保障の拡充を同時に行って大人気だったけど、なぜか国が破産した。現実の政治家の気持ちが少し分かった気がする」と話す。
発売から1ヶ月で世界的にダウンロード数1000万を突破したこのアプリだが、実際の政治家からは複雑な反応が寄せられている。ある無名議員は「私はなぜか大統領になれなかった。支持率も現実と同じく3%だった」と嘆いたという。
国際アプリ政治協会の架空の代表、マイケル・デモクラシー教授は「このアプリは民主主義の本質を問うている。誰もが大統領になれる世界こそ理想だが、皆が大統領になると誰が国民なのか、という矛盾も生じる」と指摘する。
「家族ごっこ」アプリの成功は、デジタル空間における新たな政治参加の形を示唆している。現実では実現できない政策を仮想空間で実験できることで、政治への関心が高まっているという側面もある。しかし同時に、アプリ内での国家運営があまりにも簡単に表現されることで、「政治とはこんなに単純なものだ」という誤った認識を広める危険性も指摘されている。
ともあれ、このアプリが示す「誰もがリーダーになれる世界」という幻想は、現実政治の複雑さと対比され、私たちに笑いと共に考えるきっかけを与えてくれるかもしれない。まるで、猫アレルギーなのに猫を飼う私の生活のように、矛盾を抱えながらも前に進む、そんな姿を映し出しているのかもしれない。