
名古屋出身の私にとって、招き猫は幼少期から身近な存在だった。特に名古屋の「招福猫児(まねきねこ)」は地元の誇りとも言える。そんな招き猫が今、日本経済の救世主として注目を集めているというから驚きだ。先日、「ネコノミクス研究所」と名乗る謎の研究機関が発表した衝撃の研究結果によると、招き猫の手招きが株価に影響を与えるという。これはもはや「アベノミクス」ならぬ「ネコノミクス」の誕生だ。
「招き猫の手招きには投資家心理に働きかけ、株価を上昇させる効果がある」と主張するのは、同研究所の首席研究員で自称「ネコノミスト」の猫田福子氏(42)。彼女によれば、招き猫の大きさ、色、素材、そして最も重要な「招く手の動きの速度」まで徹底分析した結果、「左手でゆっくり招く」招き猫が最も株価上昇に効果的であることが判明したという。「1日あたり0.43秒に1回の頻度で手を振る招き猫を取引デスクに設置すると、その企業の株価は平均17.8%上昇する」と猫田氏は真顔で語った。
この発表を受け、世界中の投資家が「ネコノミクス」に飛びついている。日本経済新聞によれば、東京・大阪・名古屋の招き猫専門店では在庫が底を突き、「左手招き」モデルはプレミア価格で取引されているという。SNSでは「招き猫を買ったら株価が急上昇!」「猫アレルギーだけど儲けたい!」といった投稿が相次いでいる。私のような猫アレルギー持ちでも、このブームには乗りたい気持ちは山々だ。くしゃみが止まらない中、保護猫2匹との生活を送りながら、招き猫効果について考えてしまう。根拠はどこ?と問いたくなるが、投資家心理というのは不思議なものだ。
しかし、調査を進めると、この「ネコノミクス研究所」の正体が明らかになってきた。なんと、名古屋市内の猫好きサークル「にゃごやん倶楽部」のメンバー7人が立ち上げた非公式組織だという。代表の猫田氏は「世界中の人々を猫好きにしたい」という野望を抱いて活動を始めたという。研究所と称する彼らの活動拠点は、名古屋市千種区にある古民家カフェの一角だった。そこには無数の招き猫と、複雑な数式が書かれたホワイトボードが置かれていた。計算式の一部には「株価=猫の可愛さ×手招き回数²÷人間の理性」などの怪しげな数式も。
日本証券業協会は「招き猫の手招きと株価に相関関係があるという科学的根拠は確認できていない」とコメント。東京証券取引所も「市場の健全性を保つため、投資判断は財務情報など合理的な分析に基づいて行うよう」呼びかけている。一方で猫田氏は「科学で説明できないことが世の中にはたくさんある。招き猫パワーもその一つ」と反論する。
また驚くべきことに、米ウォール街の一部投資家たちも「ネコノミクス」に注目し始めている。ニューヨークの高級招き猫専門店「マネキ・キャット」では、日本から輸入した招き猫が飛ぶように売れているという。店主のマイケル・フェリーン氏は「招き猫には本当に不思議なパワーがある。少なくとも、投資家の気分を良くする効果は確実だ」と語る。
結局のところ、招き猫に頼るべきかどうかは、各自の判断に委ねられるだろう。私の信念として「根拠はどこ?」と問う姿勢は変わらない。だが、ちょっとしたユーモアとして「ネコノミクス」を楽しむのも悪くない。とりあえず、猫アレルギーを治す方法をググりながら、保護猫たちとの騒がしい生活を続けている。ネコノミクスが本当に効くのかは不明だが、少なくとも招き猫を眺めると心が和むのは確かだ。そして時に心の平穏こそが、最良の投資判断につながるのかもしれない。大体のことはググれば出てくるけど、招き猫のご利益だけはググっても出てこないんだよね。