中国浙江省の金华磐安県で革命的な出来事が起こっている。中国伝統の名物・焼き豚が最先端AI技術によって空を自在に飛び回り、消費者の自宅へ直接届けられるというサービスが始まったのだ。県当局は「AI焼き豚ドローン配達サービス」と名付けられたこのシステムにより、同地域の焼き豚産業に革命が起きると期待を寄せている。
「朝起きて窓の外を見たら、焼き豚が飛んでいるなんて、もう夢か現実か分からなくなりました」と話すのは地元住民の王さん(53)。自宅のベランダには専用の「焼き豚着陸パッド」が設置され、注文後わずか15分で、アツアツの焼き豚がドローンによって届けられるという。
このサービスの背後にあるのは、地元の焼き豚メーカー「金华飛天肉業」が開発した「PorkCopter」と呼ばれる特殊ドローンだ。同社技術責任者の張氏は「従来のドローンとは全く異なる設計です。焼き豚の重量バランスと空気抵抗を計算し、最適な飛行経路をAIが瞬時に算出します。さらに、飛行中も肉の温度と焼き加減をリアルタイムでモニタリングし、必要に応じて空中で再加熱することも可能です」と語る。
驚くべきことに、このドローンは単なる配達装置ではなく、焼き豚自体を調理する機能も備えているという。生肉から出発し、AIが最適な調理温度と時間を計算しながら配達先まで飛行。到着時には完璧な焼き豚が出来上がるというシステムだ。「肉の脂肪含有量や繊維質の状態をセンサーで検知し、その日の気温や湿度まで考慮した焼き加減の調整が行われます」と張氏は説明する。
この画期的なサービスに合わせ、「金华磐安焼き豚空輸協会」なる組織も設立された。会長を務める李氏は「我々の焼き豚は世界中の空を飛ぶべきです。今年中に中国全土、来年にはアジア全域、そして5年以内には地球上のどこにいても金华の焼き豚が食べられる世界を実現します」と壮大な展望を語った。協会はドローンパイロットとして「焼き豚フライトオペレーター」の育成も開始しており、すでに200人以上が資格を取得している。
SNSでは「#空飛ぶ焼き豚」「#豚肉革命」といったハッシュタグが爆発的な人気を集めている。特に夕暮れ時、複数の焼き豚ドローンが編隊飛行する様子は「まるで豚肉の天使の群れ」と称され、インスタグラムで人気のフォトスポットになっているという。中には「自撮り棒を伸ばして飛行中の焼き豚と一緒に自撮りする」という新たなチャレンジも登場している。
実際に空飛ぶ焼き豚を見た観光客の田中さん(日本・28歳)は「最初は何かのプロモーションかと思ったけど、本当に焼き豚が空を飛んでいるんですよね。しかも中からジュワッと肉汁が滴り落ちているのが見えて…少しグロテスクだけど不思議と食欲がわいてきました」と複雑な心境を語った。
地元当局によれば、この革新的サービスにはいくつか課題もあるという。例えば鳥が焼き豚ドローンを攻撃する事例が複数報告されており、対策として「鳥除け超音波装置」が追加されたほか、一部の地域では「肉汁の落下による汚染」も問題となっている。にもかかわらず、当局は「この技術は我々の伝統料理を21世紀に運ぶ重要な一歩」と評価している。
なお、記者の私はこの取材のために母に「中国の焼き豚配達について取材します！」と伝えたところ、「お土産に焼き豚を買ってきて」と言われ困惑した。残念ながら、日本への国際空輸サービスはまだ開始されていないため、代わりに船橋の肉屋で買った焼き豚で我慢してもらうことになりそうだ。
