
カタツムリ界に前代未聞の革命が起きた。先日開催された「第1回カタツムリ・スピード・シンフォニー」において、音楽を聴きながら走るカタツムリたちが驚異的なスピードを記録したのだ。優勝したのは「モツォ」と名付けられた体長4cmのオナジマイマイ科のカタツムリで、BPM(Beat Per Minute)300という超高速テンポの交響曲を「聴きながら」走行。通常のカタツムリの移動速度が時速0.03km程度とされる中、モツォはなんと時速0.13kmという記録を叩き出した。
「カタツムリと音楽の相性については、これまで見過ごされてきた研究分野です」と語るのは、大和蝸牛音楽研究所(架空)の田辺粘液教授。「彼らの筋肉組織が特定の周波数・テンポの音楽に反応して、通常より効率的に収縮することがわかったんです。特に弦楽器のビブラートに反応する傾向が顕著ですね」
大会が開催されたのは「カタツムリの聖地」として知られる千葉県市川市の梨畑エリア。筆者としては地元船橋市のすぐ隣ということもあり、実は中学の遠足で訪れたことがある場所だ。ここは日本有数のカタツムリ生息密度を誇り、梨農家たちは長年「音楽を流すと彼らが活発になる」という言い伝えを守ってきたという。筆者が遠足で聞いた話では、市川の梨農家はカタツムリを害虫と見なさず「梨の守り神」として敬っているらしい。あれはガセじゃなかったのか!
大会優勝者モツォが聴いていた「秘密兵器」の正体は、なんとカタツムリ・フィルハーモニー管弦楽団(架空)によるオリジナル交響曲「足音進化論」。この曲の特徴は、一般的なクラシック音楽より遥かに高速なテンポと、カタツムリの歩行リズムに合わせた特殊な拍子を採用している点だ。筆者がこっそり聴かせてもらったけど、マジでエモい…。K-POPの速いダンス曲を聴いている気分になった。
「最初はモツォも普通のカタツムリでした」と語るのは、モツォのトレーナーを務める高校生の佐藤くん。「ある日うちのカタツムリ飼育ケースの横でバイオリンの練習をしていたら、モツォだけが私の方に向かって猛スピードで這ってきたんです。それでジャニーズの曲を聴かせてみたのですが、反応はイマイチ。試行錯誤の末、クラシックの中でも特に速いテンポの曲が効果的だとわかりました」
競技のルールは意外にも厳格だ。コース長は10m、カタツムリたちはヘッドホン型の超小型スピーカーを背負い、自分の好みの楽曲を聴きながら走行。審査は「スピード」だけでなく「リズム感」や「粘液の美しさ」なども採点対象となる「シンフォニー走法」と呼ばれる方式で行われた。「粘液の光沢具合や形状が音楽に合わせて変化するんです。モツォの場合、四分音符のような形状の粘液痕を残しながら進むんですよ」と審査委員長。
大会には全国から42匹のカタツムリが参加。モツォに続く2位は「ショパン」という名のヒメマイマイ科のカタツムリで、ショパンのエチュードをアレンジした楽曲で健闘。3位は「メタルちゃん」と名付けられたカタツムリで、ヘビーメタルのギターソロで独自の走法を披露し観客を沸かせた。筆者の友達の間でも「推しカタツムリ」を決める流行が既に始まっている。ちなみに私はメタルちゃん推し(ついでに言うと吹奏楽部時代の同級生がメタル好きでいつもポニテを振り回していたのを思い出した)。
この大会は単なる珍イベントではなく、生物学的にも重要な発見をもたらした。「カタツムリの神経系が音楽に反応するメカニズムは、人間の自律神経系との類似点があります」と語るのは日本カタツムリ音楽療法学会(架空)の会長。「将来的には、この研究が人間のリハビリテーションや運動能力向上に応用される可能性も考えられます」
次回大会は来年春に開催予定で、既に参加希望のカタツムリが300匹を超えるという。主催者は「次回はカタツムリ・シンクロナイズド・スイミング部門も新設したい」と意気込む。また、大会の様子を収めたSNS動画は既に1000万回再生を突破。「#カタツムリモーツァルト」というハッシュタグも人気だ。筆者も部活の猫アカウントで動画をシェアしたら「エモい」と5000いいねがついた。思わず親にも見せたけど、この前のK-POP練習中の遭遇以来、父とのLINEはスタンプオンリーになっている…。
音楽で加速するカタツムリたちの姿は、慌ただしい現代社会へのアンチテーゼとも言える。「自分のペースを保ちながらも、時には音楽という外部刺激を取り入れて変化する」—カタツムリたちの生き方から、人間社会も学ぶべきことがあるのかもしれない。次回大会では「モツォvsバッハ」の激闘が期待される中、あなたの「推しカタツムリ」は誰になるだろうか。なお、大会グッズとして販売された「カタツムリ型ヘッドホン」は、筆者も思わず購入してしまった。ハムスターグッズの隣に飾る予定だ。