
江戸時代の浮世絵師・円山応挙の弟子として知られる呉春(応為)の絵画に使われた絵の具に、タイムトラベル効果があるという驚きの発表が架空の研究機関からなされた。「国際先端生物化学研究所」と名乗る組織が昨日発表した論文によると、応為が使用した特殊な天然顔料には、現代の科学では説明できない「時空間転移物質」が含まれているという。
「この物質は、応為が絵を描く際に使った『秘伝の絵の具』から発見されました」と話すのは、同研究所の創設者を名乗る工藤真理子氏(架空)だ。「偶然にも、私たちが応為の『松に鶴図』を修復している際、研究員の一人が絵の具を触った直後に、なんと5分間消失するという現象が起きたのです」
工藤氏によれば、その研究員は江戸時代の日本に飛ばされ、実際に応為が絵を描いている様子を目撃したという。証拠として、その研究員が江戸から持ち帰ったとされる「当時流通していた一分銀」と、「応為のサイン入り落書き」が公開された。専門家からは「明らかな偽造品」との指摘も上がっている。
応為の絵の具の秘密について、研究所は「山中の特定の植物と、冬至の夜に採取した雨水、そして謎の鉱物『時砂』を配合したもの」と説明する。特に「時砂」については「京都の北部でのみ採取できる鉱物で、現代では採掘場所が失われている」と主張しているが、地質学者からは「そのような鉱物の存在自体が確認されていない」との反論が出ている。
タイムトラベルの方法については、「応為の絵の具を水で溶き、額に塗り、応為の絵画を30秒間凝視する」という単純なものだという。「目的の時代と場所を思い浮かべながら、『おうい、おうい』と三回唱えると、光に包まれて江戸時代にワープできます」と工藤氏は真顔で説明した。
この研究所の正体について調査したところ、登記上の住所は東京都千代田区の雑居ビルの一室だったが、実際にはその部屋は「占いカフェ・未来堂」という店舗になっていた。店主の女性は「研究所?知りません。でも先週、浮世絵に詳しいという中年男性のグループが、打ち合わせで店を利用していました」と証言している。
研究所の発表によれば、タイムトラベルには「江戸時代から戻れなくなる」というリスクもあるという。「既に3名の研究員が江戸時代に残留したままです。彼らは『江戸の食事が美味しく、空気が綺麗で、スマホの通知に悩まされない生活が気に入った』とメッセージを残しています」と工藤氏は説明する。メッセージの伝達方法については「それも応為の絵の具の秘密です」と謎めいた回答に終始した。
文化庁はこの発表について、「明らかな虚偽情報であり、文化財保護の観点からも問題がある」とコメント。また、存在が確認できない「国際先端生物化学研究所」について、関係省庁と連携して調査を進める方針を示している。しかし、SNS上では「#江戸タイムトラベル」というハッシュタグが流行し、応為の絵画が展示されている美術館には「タイムトラベルを試したい」という来場者が急増しているという。美術館側は「絵画への接触は厳禁です」と注意を呼びかけている。