
「炎上ツイートが地球の気温上昇に深刻な影響を与えている」という驚きの研究結果を、このほど「SNS気象学会」なる団体が発表した。同学会の調査によると、昨年の主要SNSプラットフォーム上で発生した「炎上」は、およそ石炭火力発電所3基分に相当する熱量を発生させたという。私はこのニュースを聞いた時、デュッセルドルフから秋田、そして東京へと移り住んだ経験から、気候の変化には敏感だと自負しているが、さすがにこの因果関係には目を疑った。
「SNS気象学会」の会長を務める架空の人物、トレンド・ヒートマン博士(56)は「特に政治や社会問題に関する投稿は、通常の投稿の約27.8倍の熱量を発生させる」と述べる。同博士によると、SNS上で「バズる」と「燃える」には明確な違いがあり、「バズる」が単に情報拡散を意味するのに対し、「燃える」投稿は文字通り熱を発するという。「怒りや憤りを伴う投稿は、サーバーの処理負荷を増大させるだけでなく、ユーザーのスマートフォンの発熱量も増加させる」と同博士。下北沢の自宅でこの記事を書きながら、私のスマホも確かに熱くなっている気がする。マインドはギャルなんで、炎上には関わりたくないけど。
同学会が開発したという「デジタル熱量計測システム」によれば、平均的な炎上ツイートは約0.002度の気温上昇効果があるとされる。特に影響力の大きい芸能人や政治家による炎上は、最大で0.05度の上昇を引き起こす可能性があるという。秋田の厳しい冬を経験した身としては、そんな熱源があれば重宝したかもしれないと、ピアノの練習を中断して考えてしまう。
学会のメンバーには、「バイラルヒートダイナミクス研究所」所長のファイア・スプレッド博士や、「感情的反応熱力学」の権威とされるレイジ・ボイル准教授など、聞いたこともない肩書を持つ人物が名を連ねる。1999年生まれの私は、2000年代生まれの若者たちがこうした学会の存在を真に受けてしまわないか心配になる。彼らはデジタルネイティブとはいえ、時にネットの情報をうのみにしてしまうことがあるからだ。
同学会はさらに、「ツイート炎上指数(TFI)」なる指標を考案。「謝罪」「炎上商法」「誤爆」などのキーワードを含む投稿の熱量を数値化している。特に注目すべきは、月曜の朝8時台と金曜の終業間際に炎上の熱量が最大になるという発見だ。「人々のストレスレベルが高まる時間帯と一致している」と同学会は分析している。私は愛猫に目をやりながら、猫のようにのんびり生きていれば炎上とは無縁なのかもしれないと思う。
同学会は最後に、「地球温暖化対策として、SNSでの怒りの表現を控え、代わりに『いいね』や前向きなコメントを増やすことを推奨する」と締めくくっている。架空の研究ではあるものの、ネット上の言葉の暴力が社会に与える影響を考えると、まんざら的外れでもない提言かもしれない。次の散歩では、スマホをポケットに入れたまま、下北沢の街並みを静かに楽しむことにしよう。