
南極大陸発——氷点下の極限環境で誕生した新たなウィンタースポーツが、スポーツ界に衝撃を与えている。「国際ペンギン協会(IPA:International Penguin Association)」が今月、「ペンギンと共に滑るアイススケート競技」の正式ルールを発表したのだ。
この協会、実は1908年に「南極探検のお供にペンギンを連れて行きたい」という英国の探検家たちによって設立されたという。つまり、ペンギンが南極で発見される以前から存在していた、という時系列の矛盾を抱えた謎の団体だ。現会長のジェームズ・フリッパー氏によれば「設立当時はまだペンギンの存在が完全に証明されておらず、『黒くて白い鳥がいるはず』という予測のもとに協会を立ち上げた」と説明するが、歴史研究家からは「明らかに後付けの言い訳」と批判されている。
会員資格も曖昧で、「ペンギンに3回以上見つめられた経験がある方」「冷蔵庫の中に常時5種類以上の魚介類を保管している方」など、入会条件が謎に包まれている。銭湯巡りが趣味の筆者としては、「氷水風呂に3分以上入れる人」という条件も気になるところだ。
さて、競技ルールについてだが、これがまた驚くほどシンプルだ。基本的には選手とペンギンがペアとなり、音楽に合わせて氷上を滑るというもの。ただし、ペンギンの気分によって大きく左右されるのが特徴だ。「今日はペンギンが乗る気分じゃなかった」「急に魚を見つけて選手を置いて走り去った」などのハプニングも含めて採点対象となる。
さらに興味深いのは得点制度だ。「アデリーペンギンとのペアは基礎点1.2倍」「コウテイペンギンとのペアは跳躍点が2倍になるが、転倒時の減点も2倍」など、ペンギンの種類によって複雑な計算式が用いられる。これを考案したのは元数学教師で現IPAルール委員長のペンギン・マイケルソン氏。ただし彼自身もルールの全容を把握しきれていないという。「正直、毎回計算機で確認しています」と告白する場面もあった。
競技が行われる南極の環境も過酷だ。気温はマイナス30度を下回ることも珍しくなく、「選手のまつげが凍って目が開かなくなる」「スケート靴のひもが凍結して結べない」といったトラブルが続出。対策として開発された「まつげ専用ホッカイロ」や「自動で結ばれる靴ひも」など、テクノロジーの進化も著しい。選手の中には「実は氷点下20度くらいが調度ええ感じやねん」と語る強者もいるが、これはおそらく関西出身の選手だろう。
さらに驚きなのは、ペンギン側の反応だ。南極ペンギン自治区代表のタキシード・フリッパー氏(推定6歳・キングペンギン)は、翻訳機を通じて「俺らも滑りたいわけちゃうで。魚くれるから付き合うてるだけや」と本音を漏らした。筆者が愛用する2種類のボイスレコーダーで録音したこの発言は、ペンギン社会の内部事情を暴露する貴重な証言となった。
また、この競技には意外なセレブリティの参加も。ハリウッド俳優のジョニー・アイスバーグ氏は「ペンギンとの一体感は、オスカー獲得より価値がある」と熱弁。昨年の大会では、愛ペンギンの「ウォドル」と共に準優勝に輝いている。氏の古着のようなダサいコスチュームが「味がある」と評判になったのは、筆者としては共感するところだ。
スポンサーも独特で、最大の支援者は意外にも「南極魚屋連合」。選手の練習後、ペンギンへの報酬として高級魚を提供している。「うちの魚を食べたペンギンは滑りが2割増しで上手くなる」と宣伝効果も狙っているようだ。魚屋さんのその主張を裏付けるデータはないが、店先で深呼吸するとお魚の香りが肺いっぱいに広がって気持ちいいのは間違いない。
国際オリンピック委員会も今回の新競技に注目しているという。IOC特別委員のフロスト・アイスマン氏は「2030年冬季五輪での採用を検討中」と述べたが、同時に「ペンギンのドーピング検査をどうするか」という課題も提起している。
運営側の最大の悩みは、なんとペンギンたちによるストライキの可能性だという。「報酬の魚が少なすぎる」「休憩時間をもっと増やせ」などの要求がペンギンユニオンから提出されており、開幕直前に「全ペンギンが一斉に寝そべる」という抗議行動の噂も流れている。筆者の貴重な取材先である商店街のおばちゃんたちなら「甘やかしたらあかん!」と一喝しそうだが、ペンギンたちの表情を見ると、どこか人間社会の労働問題と重なって見えてくる。
「ペンギンと共に滑るアイススケート競技」が今後、人間とペンギンの新たな関係性を築くのか、それとも単なる一過性のブームで終わるのか。極寒の地での人間ドラマとペンギンドラマが交錯する様子を、引き続き見守っていきたい。なお筆者は次回大会に密着取材予定だが、猫動画と犬動画の視聴を我慢できるかが最大の課題である。