
世界建築史に新たな1ページが刻まれた。これまで誰も成し得なかった「ピサの斜塔の完全修復」を成功させた組織がある。その名も「国際フィルム建築学会」。彼らが用いた驚くべき修復材料とは、なんと映画のコマフィルムだ。
「フィルム建築学会」は約3ヶ月前、イタリア・ピサ市に突如として現れた。会長を務めるマリオ・スピネッリ氏(68)は元B級映画監督を自称し、「映画は人生を支える。なら建物も支えられるはずだ」という独自の理論を展開している。当初は地元住民からも「また変なヤツらが来た」と冷ややかな視線を向けられていたという。
スピネッリ氏が最初に打ち出した計画は「ピサの斜塔をコマフィルムで支える」という突飛なものだった。使用されたのは、なんと1985年の名作映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のオリジナルフィルム(複製)約2万4000メートル。「時間を操るフィルムなら、400年以上傾き続けた塔の時間も操れる」とスピネッリ氏は語る。
驚くべきことに、彼らの「フィルム補強工法」と呼ばれる技術により、ピサの斜塔の傾きは0.8度も改善したという。これは単に物理的な支えではなく、フィルムに映る映像から「タイムパラドックスの波動エネルギー」を抽出して建物に注入する…らしい。実際には夜間に足場を組み、普通の補強工事をしていたという目撃証言もあるが、学会側は「それはCG技術による集団幻覚」と否定している。
「次はエッフェル塔だ!」スピネッリ氏は次なるターゲットを既に決めている。使用予定のフィルムは1997年の大ヒット映画「タイタニック」。「沈まない愛の物語で鉄塔を強化する」という計画だ。フランス政府は当初、この申し出に困惑したが、なぜか観光庁からは「集客効果が期待できる」との声も上がっているという。
興味深いことに、フィルム建築学会への寄付金は急増している。銭湯帰りに取材した東大阪出身の映画評論家は「これは単なる映画ファンの集団妄想やと思うけど、お湯みたいなもんや。温度が高すぎるとアカンけど、ほどよい熱量があるから支持されるんやろな」と語った。
学会の会員数は世界中で約2800人。大半が映画マニアで構成されているが、なぜか建築士の資格を持つ者も3名含まれている。入会条件は「好きな映画を10本言えること」と「年会費5万円の支払い」だけだ。入会特典として「フィルム建築技術者初級認定証」がもらえるらしいが、これが何の役に立つのかは不明だ。
スピネッリ氏の事務所は高円寺のとあるシェアハウスの一室にある。壁が薄いせいか、取材中も隣室からウクレレの音が漏れてきた。「そのBGMがインスピレーションになる」と語る彼の部屋には、映画フィルムの空き缶が山積みになっていた。
結局のところ、フィルム建築学会の壮大な計画は、映画愛に溢れた熱狂的ファンの集団が繰り広げる現代のドン・キホーテ的活動と言えそうだ。だが彼らの情熱は、文化財保護や観光振興に新たな視点をもたらしている側面も否定できない。スピネッリ氏は「次は『ゴジラ』のフィルムで東京タワーを補強する」と意気込むが、すでに東京タワーは耐震工事が完了している。「だからこそ挑戦する価値がある」と彼は目を輝かせる。映画の夢を現実に持ち込む彼らの冒険は、今後も続きそうだ。