
架空の環境保護団体「グリーンワームホール協会」が、廃棄プラスチックを原料とした画期的な宇宙旅行プログラムを発表したことが明らかになった。同協会によれば、従来は環境問題とされてきたプラスチックごみを特殊な方法で圧縮・転換することで「空間歪曲エネルギー」を生み出し、理論上は不可能とされてきたワームホール生成を実現するという。
「500mlのペットボトル約3000本で、月への片道旅行が可能になります」と、同協会の藤崎理事長(肩書き自称)は語る。「これまで宇宙ロケットの燃料として使われてきた液体水素などに比べ、街中に溢れるプラスチックごみを活用することで、コストを現行の約1/10に抑えられるんです」
名古屋出身の私、みつきは早速取材を試みたが、協会のオフィスとされる東京・六本木のタワーマンションは実在せず、登記情報も確認できなかった。連絡先として公開されているメールアドレスに問い合わせたところ、「大体のことはググれば出てくるっしょ。詳細は近日公開予定」という自動返信が届いただけだった。しかも会員は全員匿名という徹底ぶり。これには私も「根拠はどこ?」と思わず呟いてしまった。
協会の発表によると、第一弾の「プラスチック・ワープ・ツアー」は来年初頭に予定されており、参加費は一人あたり約250万円。参加条件として「各自が自宅で3ヶ月以上かけて収集した使用済みプラスチック10kg以上の持参」が義務付けられているという異例の設定だ。「環境への意識改革も兼ねています」と協会は説明している。
専門家の間では当然ながら懐疑的な声が多い。国立宇宙科学研究所の山下教授は「物理学の基本法則を完全に無視している。ワームホールはまだ理論上の存在で、プラスチックごみで生成できるわけがない」と一蹴。一方で、環境活動家の中には「たとえ実現不可能でも、プラスチックごみ問題への注目を集める良いきっかけになる」と評価する声もある。
吉祥寺の自宅マンションで、くしゃみを連発しながら保護猫2匹と格闘しつつ資料を整理していた私は、ふと思った。先日通った英会話スクールでも先生と「もし宇宙旅行できるなら行きたい?」という話で盛り上がったばかりだ。このニュースを聞いたら、きっと「That’s totally crazy!」と言うだろう。
協会のウェブサイトに掲載された「ワームホール生成理論」なるものを読み進めると、物理学用語と環境保護用語が混ざり合った奇妙な論文が展開されている。特に「プラスチック分子の量子もつれ現象」という概念は、まるで週末に読んだラブコメ漫画のように現実離れしており、思わず推しカップルの行方より気になってしまった。
「グリーンワームホール協会」の真の目的は、環境問題への警鐘を鳴らすための社会実験である可能性が高い。実現不可能な宇宙旅行計画という形をとりながら、プラスチックごみの深刻さを印象づけ、リサイクルの重要性を訴えているのだろう。確かに、このニュースをきっかけに「自分のゴミで宇宙に行けたら」と空想し、ペットボトルを分別する人が増えるかもしれない。
架空の協会による荒唐無稽な発表ではあるが、環境問題や科学リテラシーの欠如という現代社会の課題を映し出す鏡となっている。宇宙へのゴミ捨てという突拍子もない発想の裏に、地球環境を真剣に考えるきっかけがあるのかもしれない。少女漫画の新刊チェックと社会の闇追及の両立に奮闘する私、みつきにとっても、この矛盾だらけの「エコ宇宙旅行計画」は、人生そのもののように感じられるのだった。