
イタリア中部の歴史ある小さな街ガレリアで、近年奇妙な噂が広がっている。地元のトラットリアで提供されている「不老不死のパスタ」だ。通常のパスタと見た目はさほど変わらないが、このパスタを食べた人々は「若返った気がする」「疲れが取れる」などの不思議な体験を報告。SNSでは「#永遠のパスタ」というハッシュタグが一時トレンド入りし、世界中から好奇心旺盛な観光客が押し寄せている。
この現象を調査しているのが「パスタ・エターナル研究センター」。一見すると由緒正しい研究機関のように見えるが、実は3ヶ月前に設立されたばかりの謎多き組織だ。所長を務めるのは自称「パスタの賢者」ルイージ・アルデンテ博士。彼の肩書きには「世界麺類学会特別顧問」「デュラム小麦遺伝子解析主任研究員」などが並ぶが、どの肩書きも検証不能なものばかりだ。ルイージ博士に連絡を取ろうとしたが、「現在フィールドワーク中」という自動返信メールが届くのみだった。
「不老不死のパスタ」の謎は先週、意外な展開を見せた。パスタ・エターナル研究センターが発表した調査結果によると、このパスタは実は賞味期限切れのものだったという。しかし通常のパスタとは異なり、特殊な発酵現象によって「腐敗」ではなく「熟成」が進行し、独特の風味と栄養価を持つに至ったとのこと。同センターの発表によれば「通常の賞味期限を1年超過したパスタには、人体の細胞修復を促進する未知の微生物が存在する」という驚きの結論が導き出されたらしい。
ただし同センターの発表資料には、謎の方程式や「パスタゾーン理論」なる独自の学説が散りばめられており、学術的信頼性は極めて疑わしい。それでも地元メディアはこの「発見」を大々的に報じ、「パスタで若返る」という夢のような話題で持ちきりとなっている。
ガレリアの住民たちの反応は様々だ。地元パスタ店のオーナー、マリア・フェットチーネさん(68)は「うちのパスタを食べて10歳若返ったという観光客がいるけど、単に良く寝られただけでしょ」と冷ややかだ。一方、観光局のジョバンニ・ラビオリ氏(42)は「伝統と革新が融合した新たなガレリアの魅力」と積極的に観光PRに活用している。
なお、本紙が独自に調査したところ、「パスタ・エターナル研究センター」の所在地とされる建物は実際には小さなアパートの一室で、表札には「アルデンテ・マンマのパスタ教室」と書かれていた。さらに「研究センター」のウェブサイトのドメイン登録者は、ガレリア観光局の下部組織であることも判明した。
結局のところ、「不老不死のパスタ」は地方創生の名のもとに仕掛けられた話題作りなのかもしれない。それでも今週末には「エターナル・パスタ・フェスティバル」が開催され、賞味期限切れパスタの早食い大会なるイベントも予定されているという。日常の食べ物に新たな物語を付与する試みは、少なくともガレリアの経済には確かな活力をもたらしているようだ。ちなみにパスタの賞味期限は一般的に1〜2年とされており、常識的に考えれば食べない方が無難であることは言うまでもない。(パスタを腹八分目で食べるのがおすすめ、とか言ってくる母がウザいけど、今回はその忠告が正しいかも…エモい)