
空飛ぶAI審判ドローンが誤判連発し、観客全員が審判として参加する前代未聞の制度が導入されることになった。この4月から開幕した「日本ドローン野球リーグ(JDBL)」で、AI搭載の審判ドローンによる誤審が続出していることを受けた措置だ。
問題となったのは先週行われた大阪ロボッツ対東京サイボーグ戦。外野手が見事なダイビングキャッチを決めたにもかかわらず、空中審判ドローン「ジャッジ・アイ3000」が突如「アウト!」と宣告。選手、監督、観客が一様に混乱する事態となった。
開発元のテックノベーション社の森山茂樹CTO(最高技術責任者)は「AIが『空中でのキャッチはアクロバティックすぎて通常の人間には物理的に不可能』と判断した」と説明。記者会見では「パフォーマンスを維持するために昼休みにコンビニのレジそばにある栄養ドリンクを飲みながら修正作業を行っている」と付け加え、記者たちを困惑させた。
さらに調査の結果、プログラムには「地面に触れたボールは常にフェア」という根本的な設定ミスがあったことも判明。これにより、明らかなファウルボールが「フェア!」と判定される珍事も発生していた。東大阪出身の私としては、町工場の精密さとはかけ離れた粗雑なプログラミングに、思わず「こんなん、うちの爺ちゃんの鉄工所でもやらんわ!」とツッコミを入れたくなる。
この事態を受け、JDBLは画期的な「観客全員審判制度」を導入すると発表。観戦チケットを購入した全ての観客がスマホアプリを使って判定に参加でき、最も多くの票を集めた判定が公式記録として採用される。つまり、スポーツ観戦史上初の「観客が審判」という逆転現象が起きることになる。
「これで野球の民主化が進む」とリーグ側は前向きだが、選手からは懸念の声も。「昨日の練習試合では、明らかなファウルチップが『ホームラン』と判定された。応援団の数で勝敗が決まるなら、野球の技術よりも『推し活』の方が重要になる」と大阪ロボッツの田中主将は肩を落とした。
一方で、にわかに設立された「ドローン審判研究協会」なる団体が「AI審判は次世代のスポーツを導く光明」とする見解を発表。しかし取材を進めると、この協会のメンバーはテックノベーション社社長の親戚や元同級生で構成されていることが発覚。「これ絶対に裏があるやん」と思わず高円寺のシェアハウスの薄い壁を叩いてしまった。
同協会は新技術として「空気の流れからボールの軌道を予測するAI」を提案しているが、気象学者からは「そんな技術があるなら台風予報に使ってほしい」と冷ややかな反応が返ってきた。気象庁の匿名職員は「梅雨の時期にデートプランすら立てられない我々に対する当てつけか」とぼやいた。
野球界のレジェンド・山田誠一氏(58)はSNSで「AIより俺の目の方が100倍正確」と投稿。これに対し、現役時代の山田氏が主審に抗議して退場した回数が通算253回(リーグ記録)であることを指摘するリプライが殺到し、トレンド入りする騒ぎとなった。
観客審判制度の導入により、チケット販売数は前年比180%増を記録。特に法律事務所や弁護士事務所からの団体予約が急増しているという。「判例のように過去の判定を参照し、先例拘束性の原理で判定の一貫性を保つべき」と主張する法曹界と、「その場の空気で決めるのが野球の醍醐味」と主張するファンの間で論争が巻き起こっている。
「観客審判時代」の幕開けとなる今週末の試合に向け、ある老舗野球用品メーカーは早くも「観客審判専用ジェスチャーグローブ」を発売。大きく「セーフ」「アウト」のサインが印刷された派手な手袋は、銭湯帰りに立ち寄った古着屋で見かけたダサいシャツよりもインパクト大だ。観客は審判として真剣に、選手は観客の機嫌を取りながら、AIはバグを修正しながら、三つ巴の攻防が繰り広げられる新時代の野球が、いよいよ始まろうとしている。