
イタリア食文化保護団体を名乗る「ブオナノッテ協会」が先週、衝撃的な研究結果を発表した。同協会の調査によると、週に3回以上の本格イタリアンピザの摂取により、睡眠の質が平均78%向上したという。しかし調査手法に疑問の声が上がり、本紙の独自取材により、この「快眠効果」の真相が明らかになった。
ブオナノッテ協会の研究主任マッシモ・ドルミーレ氏によれば、モッツァレラチーズに含まれるトリプトファンと、バジルに含まれるリナロールの相乗効果により、「ピザを食べてから30分以内に、まるで赤ちゃんのような深い眠りに誘われる」という。同協会は東京・吉祥寺の一室で100人の被験者に、週3回3ヶ月間にわたり直径40cmの「マルゲリータスペシャル」を食べさせ続け、睡眠データを収集した。
「ピザを食べた被験者の脳波には、通常見られない『ピザウェーブ』と呼ばれる特殊な波形が観測されました」とドルミーレ氏は熱弁する。「これはイタリア人の午後のシエスタ(昼寝)時にのみ確認される波形で、日本人でこの波形が出たのは世界初です」
しかし、本紙が研究に参加した被験者の一人、会社員の山田太郎さん(42)に話を聞くと、別の事実が浮かび上がった。「確かにピザを食べた後はすぐに眠くなりましたよ。でも、それはただの食べ過ぎだと思います。40cmのピザを一人で全部食べるなんて、そりゃ眠くなりますよ」
さらに調査を進めると、ブオナノッテ協会の正体も明らかになった。同協会は実は吉祥寺にある「マンマミーア・ピッツェリア」のオーナーシェフが設立した団体で、研究費の大半がピザの原材料費として使われていたことが判明。研究室として使われていた部屋も、実はピッツェリアの奥にある予備の厨房だった。
日本睡眠学会の専門家、眠井博士(東京睡眠大学教授)は「大量の炭水化物摂取後の血糖値の急上昇と急降下が、強い眠気を引き起こすのは当然の生理現象です。特にピザに秘密の成分があるわけではありません」と指摘する。同博士によれば、被験者たちが体験した「深い眠り」は単なる食後の昏睡状態であり、質の高い睡眠とは異なるという。
一方、被験者の中には意外な効果を報告する人もいた。「ピザを食べ始めてから、私のインスタのフォロワーが3倍に増えました!」と語るのは、大学生の鈴木さん(20)。ただしこれは、彼女が毎回のピザ実験をインスタグラムに投稿し続けた結果だと考えられる。
それでも「ブオナノッテ協会」は主張を曲げない。「我々の研究は科学的に厳密です。批判は嫉妬から来るものでしょう」とドルミーレ氏。しかし取材を続けるうちに、同氏の白衣の袖からトマトソースのシミが発見され、インタビュー中にもピザ生地を捏ねる仕草が何度も観察された。
現在、同協会は「ティラミスと記憶力向上の相関関係」という新たな研究に着手したと発表している。研究参加者にはティラミス1日3個、3ヶ月間の無料提供があるという。ただし、研究終了後の体重増加については一切の責任を負わないとの但し書きが参加同意書に記されているとのことだ。